久しぶりの本谷さんの作品。
振り返ってみると
ぼくは意外にもこれまで3冊読んでいた。
遭難、
嵐のピクニック
自分を好きになる方法
皮肉と毒と尖っているところがぼく好み。
で
そういうイメージで読み始めると面食らうことになる。
あれっ?
これまでとちょっと違う?
って。
でもまあ読み終えてみると
これもひとつの成熟なのかもなあ
なんて思う。
なんかねえ
夫がほんとうにいけてない。
いけてないんだけど
わからないでもないんだなあ
これが。
仕事はどうやらそこそこできるようで
収入は人並み以上にあって
結婚前からマンションを持っている。
妻にも
働かなくってもいいよ
ってこれは経済的余裕のあるひとのセリフ。
で
妻もそれまでの仕事に嫌気がさしていたこともあって
ラッキー
とばかり主婦ライフに入る。
いまのところ子どもは授かっていないので
まったくもってお気楽極楽。
猫と暮らす。
しかししかし
夫は外では働くんだろうけど
家ではなんにもしない。
暇さえあれば
テレビでバラエティ番組を見るか
ゲームをするか。
家ではねえ気を使いたくないの
無理せずありのままの自分でいられるから
君と暮らしてるんだよ。
いやいや
それでも共同生活するんだったら
ある程度の気は使えよ
ってそれはたぶん読者の感想で
わが身を客観的にみれば
おんなじようなことをぼくも言ってるかも。
で
妻の方は妻の方で
そんな夫に愛想を尽かすわけでもなく
それなりに受け入れて適当に暮らす。
だって仕事しなくてもいいし
子育てだっていまはないし
経済的な苦労もないし。
まあ
何かを暗示するように
お互いの顔のパーツが
ばらばらとばらけたりはするのだが
それはなんかわかるようなわからないような。
正直なところこの作品はぼくの好みではなかったが
併録されている短い3作品は
エッジが効いていてぼくはやはりこういうのの方が好き。
--異類婚姻譚--
本谷由希子