聡明なティーンエイジャーが詠む短歌は
感性があやうく繊細で
思わずどきりとしてしまう。
言語能力や表現力の高さと
経験の未熟さゆえの世界の狭さ。
そのアンバランスなバランスが胸を衝く。
Ⅰ 我が家は複雑なので
Ⅱ 幸せになるのはやさしくない
Ⅲ すきっていうその気持ちがいいんだ
Ⅳ ともだちは実はひとりだけ
お父さんやお母さんとの関係がいい。
こどもが接するおとなの代表は
どうしても親だ。
そのどうしようもない距離感。
そして彼女が抱えるさびしさと孤独感。
ぼくがいちばん好きな歌はこれ。
--冷蔵庫開けて食べ物探すときその目をだれにもみられたくない
これだけ読んでもぴんと来ないかもしれないけれど
この歌集全体の空気感のなかでこれを読むと
少女の内側のデリケートな部分を覗き見てしまった
というようないけない気持ちになってしまう。
宇野亜喜良さんの絵と
穂村弘さんの解説が
彼女の歌の魅力をいっそう際立たせている。
--ともだちは実はひとりだけなんです--
平岡あみ