カチカチ山 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

太宰治さんの


“お伽草紙”



まず


“前置き”


があって


それから


“瘤(こぶ)取り”


“浦島さん”


“カチカチ山”


“舌切雀”


と4つのお話が続く。




この“前置き”が小説の構成上


結構重要とみた。




単にリライトされた4つの昔話を並べているだけの場合に比べて


複雑な効果を与えているように感じる。




それはさておき


“カチカチ山”


である。




エッジがきいている。




尖ってるぜ太宰。




小説とは単に感動的なストーリーを描くだけではなく


いかに小説としてのたくらみを巧みに実現していくかにその価値がある。




技巧が冴えわたっている。




あの狸と兎の話がこんなふうになるとは。




残酷な皮肉がてんこもり。




狸は37歳の醜男で


兎は16歳の美少女。




その狸が純情に兎に恋しているなら憐れながらもまだ同情の余地もあるけど


まあ読めば読むほど狸はやっぱり酷い野郎だから兎にあんなふうにいたぶられてもしようがない。




その兎は兎であの年代の少女特有の無邪気な残酷さでもって


これまたなんともえげつない。




きもいならきもいで仕方がないけどせめて無視してやってほしい。




まあ狸もあまりにもあほでしょうもないやつだから


どんなかたちであれ兎に構ってもらえるのはうれしいのだが。




滑稽な話で顔をしかめたりにんまりしたりしながら読ませるのだが


ところどころなぜか身につまされるような気分になるのは


この愚かしい狸がどこか自分に似ているからなのだろうか。












――カチカチ山――


太宰治