春を歩く | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

桜の花びらを踏みながら歩くのは申し訳ない。


茶色くなっていく桜色をみるのはしのびない。


なるべくよけて歩く。


だれも歩かない側溝にたまった花びらはきれい。


両手ですくって空に向かってまき散らしたくなる。


歩くはやさが好き。


走るよりも歩く。


じっくりと眺められる。


まわりの景色を。


自己の内面を。


箕面の滝道を歩く。


舗装された道は歩きやすい。


箕面川のせせらぎ。


奇岩。


新緑のいろはもみじ。


曇り空。


閑散とした午後の滝。


見物人がいようがいまいが滝はいつもどおりにしぶきをあげる。


雨あがりのせいかいつもよりも水量が多いくらいに。


1匹の猿が木の枝にのぼりこちらをうかがっている。


先月ここを訪れたときにもいたやつに違いない。


きっと食べ物を与えてしまうひとがいるのだろう。


猿にとってもためにならないことなのに。


きっとやさしいひとなんだろうけどその場しのぎで無責任だと思う。


舗装されていない道を帰る。


ところどころぬかるんでいる。


足を滑らせないように慎重に歩く。


分け入っても分け入っても青い山。


種田山頭火の句を思い浮かべる。


山頭火といえばぼくにとってはこれ。


どうしようもないわたしが歩いている。


肯定も否定もしない。


ただただどうしようもないわたし。


立派でもないが愚かでもない。


いやまあ愚かなんだろうけれど自分の愚かさを自覚しているだけまだよい方だと思う。


わかっていないひとはいっぱいいるからね。


ってそういう自己弁護のあまさ。


歩けば歩くほど内面に沈んでいく。


平坦な場所に出てふと視線をあげる。


そこには見渡す限りの緑の葉。


あわい光を反射している。


そよかぜがほほをなでる。


ぼくたちは人生という道を歩いている。


滑らないように足元を見つめながら。


それはとても地味なことだ。


右足左足右足左足。


単調な繰り返し。


疲れる。


なんのために歩いているのかと考える。


もう歩くのをやめようかと思う。


けれどもときおり美しい光景を目にする。


するとまた歩く元気がわいてくる。


ささやかな報酬。


こつこつと歩いたものだけが目にする光景。


感じることができる境地。


歩くことは生きること。


生きることは歩くこと。