ゼツメツ少年 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

喪失を想像力で浄化する。


大事なのは想像力です。


重松清さんの作品を読むのはおそらくはじめて。


よくできたいい物語

だと思って読んでいたら3分の2を過ぎたあたりで

いい方に裏切られた。


この展開はいい。


中学2年生の少年タケシ

小学5年生の少年リュウ

おなじく5年生の少女ジュン。


それぞれにゼツメツの危機に瀕している。


ゼツメツ。


その意味するところは。


ぼくはきっと既にゼツメツしている。


いつからだろう。


自分を偽っているつもりもないし

それなりにイイやつだとも思っているけれども

たいせつなものはいろいろと失ってきたような気がする。


ポール・オースターさんの

写字室の旅

を思わせるように

重松さんのかつての作品の登場人物たちが

3人のこどもたちの冒険を手助けする。


あいにくぼくはこれらの登場人物たちを知らないのだが

知っていれば物語はさらに広がりを持つのかもしれない。


フィクションのなかに別のフィクションが入っている

メタフィクションになるのだと思うが

これが何重にも複雑に絡んでいるので

こういうのが苦手なひとには読みづらいのかもしれないが

ぼくは好き。


複雑さを分解せずに複雑なまま感じたい。


登場人物たちがみな魅力的。


おおげさでない抑えた表現もいい。


終盤のレモンも利いている。


こどもたちのためというより

おとなのためのファンタジーだ。


たいせつなひとを失った経験のあるおとなにとって

大事なのは想像力だ。






――ゼツメツ少年――

重松清