30ページ足らずの短篇。
“いたちなく”の続きらしき書き下ろし作品。
夫の妻と、夫の友人の妻は、初対面のあと、とても親しくなっている。
友人の妻がこどもを産む。
お祝いに夫妻が友人の家を訪れると、雪が降り積もり、日帰りのつもりだったが泊まらなければならなくなる。
赤ん坊の描き方が絶妙。
なにかがあるような思わせぶりな表現。
かといって、何かの伏線めいたあざとさは感じさせない。
で、実際に、何かの伏線ってわけでもない。
でも、やっぱり読みながら少し不安になる。
ここでも夫と妻の意志のずれのようなものが不協和音を響かせているのだが、これも何か直接的に描かれているわけではない。
夫の友人がいくつもの水槽で飼っている地味な熱帯魚。
特にアロワナ。
これも効果的。
そしてまた控えめながらも重たく鋭いフィニッシュ。
無機質ともいえる文章で緻密に隙間をあけながら積み上げられる文章がとても気に入っている。
――ゆきの宿――
小山田浩子