読み応えがあったがようやく読了。
正直にいってほとんどちんぷんかんぷんだったけれども宇宙の話はわくわくする。
原題は
A UNIVERSE FROM NOTHING
WHY THERE IS SOMETHING RATHER THAN NOTHING
無から生じた宇宙
なぜ何もないのではなく、何かがあるのか
作者は無神論者ではなく反神論者。
先鋭的ともいえる徹底ぶり。
理解できない事に遭遇するたびに神を持ち出すというやり方を嫌悪している。
理解できない事に遭遇すれば理解できるように理論構築と実験を繰り返すべきだという考え方。
ぼくは神はいてもいなくてもいいという考え方。
信じたいひとにはいればいいし、信じないひとにはいなくてもいい。
ただし、暴力に利用される神は厭だと思っている。
まあ、作者が反神論者だからといってこの本をそういう色眼鏡で読むのはもったいない。
SFのように読むのはあり。
科学の問いは“なぜ”こうなるのかではなく“いかにして”こうなるのか。
本書のなかの小見出しをひろうだけで一篇の詩ができあがるかのよう。
ビッグバンと天地創造
セファイド変光星の観測
宇宙は膨張している
超新星爆発からわかること
曲がる空間
重力レンズ効果
銀河の質量を測定する
暗黒物質の存在
実験による検出の試み
宇宙背景放射が伝えるもの
ブーメラン実験
アインシュタインの宇宙項
量子力学拡張
反粒子の存在
時間を逆行する電子
クォーク間で起きていること
空っぽの空間のエネルギー
膨張速度を測る
加速膨張で決定
暗黒エネルギーの存在
グースのインフレーション宇宙論
量子のゆらぎ
「負」のエネルギーとは
ぴったりゼロに
観測できる稀有な時代
ヘリウム量の変化
1兆年後の未来は
人間原理とマルチバース
永遠に続くインフレーション
ひも理論の問題点
ひも理論からの宇宙論
物理学は「環境科学」なのか
「無」の定義とは
生命は何から生じるか
ニュートン的なエネルギー
ブラックホールの蒸発
10億分の1の非対称
「何もない」は不安定
アインシュタインのいう神とは
仮想粒子のような仮想宇宙
エネルギーがゼロの宇宙
無から生じてよい
マルチバースの宇宙像
プラマイゼロであり時間も空間もないところで起こったほんのちいさな非対称。
そこからすべてははじまった。
理由なんてない。
ただ結果としてこうなったというだけのこと。
非対称から生じた宇宙の片隅で人類が非対称なあれやこれやを演じるのはやむを得ないこと。
――宇宙が始まる前には何があったのか?――
ローレンス・クラウス
訳 青木薫