あの地震と事故のあと、もしもあのひとが生きていたらどういう行動をしただろう、とぼくが想像したひとがふたりいる。
ひとりは井上ひさしさんで、もうひとりは忌野清志郎さんだ。
この番組で忌野清志郎さんの転換点のひとつとして挙げられていたアルバム“COVERS”はぼくも聴いていた。
そして、ザ・タイマーズの“THE TIMERS”も。
青二才のぼくにとってはちょうどいい感じで刺激的だった。
けれどもいつしかそういうスタイルに違和感を覚えて離れてしまった。
おとなになってからはRCサクセションの初期の楽曲の方が好きで、“ぼくの好きな先生”とか“スローバラード”とか“雨あがりの夜空に”とか“トランジスタ・ラジオ”とかそういう曲を聴いていた。
忌野清志郎さんの原点はこれらの曲であって、“COVERS”とか“THE TIMERS”とかの政治色、メッセージ性の強い曲は、ちょっと成功しちゃったひとが陥りがちな迷走状態なんじゃないかと思ったこともあった。
そういいながらも“デイ・ドリーム・ビリーバー”なんかも好きだったのだが。
ロックと政治。
この関係はどうあるべきか。
日本のスタイルと英国のスタイルも違うみたいだ。
そりゃそうだろうけど。
この番組で特にぼくが気に入ったことばがこれ。
大きな矛盾を抱えながら自分だけの道を探す。
このことばは忌野清志郎のロックンロール人生にぴったりだと思った。
すっきりした答えなんて見つけられるはずがないし、そんなものがもしあるとしたらそれこそ胡散臭いに違いないけど、そんな大きな矛盾を抱えながら、それをしっかりと自分でも認識しながら、歩いていくのがぼくたちの道なのだろう。
矛盾だらけのこの世界を生きるぼくたちの掟なのかもしれない。