3月のライオン(6) | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

3月26日、27日に静岡県河津町の今井荘で行われた第63期王将戦七番勝負の第七局。


渡辺明二冠(王将、棋王)が110手で羽生善治三冠(王位、王座、棋聖)を降し、防衛を果たした。


羽生さんびいきのぼくとしては残念でもあるが、最終局までもつれる熱戦を演じた両者の健闘に敬意を表したい。


さて、久しぶりに第六巻へと進む。


ゆっくり追いついていくのが、じれったくてうれしくて。


この物語の登場人物に共通するのは、誰もが単純に正でも邪でもなく描かれ、正にも邪にも愛がこめられていること。


誰かにとっての邪は誰かにとっては正であったり。


邪は邪ではあるが、そこにひそむ優や弱や儚は正のそれと違わなかったり。


そんなことを思いながらページをめくった第六巻。


――彼女を泣かせた人間を

今すぐにでも

全員探し出して

八つ裂きにしてやりたいと

思ったが

「そんなんじゃ

解決にならない」

「彼女の為に何ひとつ

ならない」

だから

考えろ

考えろ

どうしたらいい

考えるんだ


ひなのことを思いながら自分にできることを考える零。


じいちゃんの力強い肯定。


親身に零の相談にのる林田先生。


――どのケースにも効く

「完璧な答え」なんて

どうやったって出てこない

だからって

あきらめる訳には

いかねんだ!!

「答えが見つかんないから

何もしませんでした」じゃ

話は進まねえ


このことばにどきりとする。


正しい答えなんてない。

ケースバイケースとしかいえない。


これはぼくがよくつかう言い訳。


そういって逃げている。


最大公約数を見出す努力から目を逸らしているのはぼく自身。


よくわかってる。


高橋くん、いいやつだな。


偏見かもしれないけど、体育会系のひとのシンプルな思考と行動に、ぼくなんかはしばしば救われる。


たとえば、食べ物をくれるひとはいいひとだ、っていうのは真理だと思う。


いつまでたっても自意識がこじれちゃっているぼくなんかはそういうシンプルな思考や行動ができなかったりする。


零はひなの行動に思う。


――辛すぎるのなら そこから立ち去っていい

まともじゃない事を してくるヤツらには

まともに 立ち向かう事はしなくていい

でも

そうだ 彼女は

ただ 辛がっているんじゃない

怒っているのだ

それも

腹の底から 煮えくり返る程に


新人王戦で死力を尽くしてたたかう二海堂。


山崎と対戦する零。


――自分の

問題を

克服せずに

他人に背負わせる事を

「正しい」と言うのなら

僕の答えは

ただ一つ

ふざけるな


またもやぼくに突き刺さる。


自分の前に立ちはだかる壁の高さにひるみ、この問題はぼくだけじゃなく誰にとっても越えられっこないんだからぼくだって越えなくても構わない、なんて自己正当化して、ぼくがその壁を越えれば救われるであろうひとたちのリスクを放置する。


零の憤りはそんなぼくにも向けられている。


でもね、それは零自身にも向かっているはずなんだよ。


もだえくるしみながらすこしずつ何かをとりもどしていく零。


それにしても第四巻の島田八段の胃痛といい、ひなの胃痛といい、繊細な人間を苦しめるこの胃痛という症状はなんの試練なんだろう。


きついストレスが続くと胃腸をやられがちのぼくにとっても共感できるそのつらさ。






――3月のライオン(6)――

羽海野チカ