NHKスペシャル 日米開戦への道 知られざる国際情報戦 | (本好きな)かめのあゆみ

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昨日は12月8日。


72年前の1941年12月8日、日本は、ハワイのオアフ島にある真珠湾を攻撃し、日米戦争が始まった。


しかし戦争は急に始まるわけではない。


少しずつ、少しずつ、歯車がそっちの方向に向かっていくのである。


それは、誰かの意図とは、案外、無関係に、不幸な錯誤や、微かな行き違いによってなど。


ゆうべの放送、“NHKスペシャル 日米開戦への道 知られざる国際情報戦”を興味深く観た。


戦争のことを書こうとすると、どうも話が複雑で、あっちの立場の人とこっちの立場の人と、どちらからも怒られるので、ついついどっちつかずの内容になるのであるが、端的に言って、昨日の番組は、なかなか示唆に富んでいた。


日本にもいろんな考え方の人がいて、アメリカにもいろんな考え方の人がいて、日米戦争にはあまり関係がなさそうなイギリスやソ連、中国にもいろんな考え方の人がいる。


通信傍受や、スパイ活動によって、集められる情報。


ときには情報を活用し、ときには情報に踊らされ、ときには情報に欺かれる。


メディア操作、ロビー活動、外交努力。


この手の話は、ちゃんと勉強してこなかったので、昨日の番組のうろおぼえの受け売りになるが、簡単にメモすると、こんな感じになると思う。(間違ってたらごめんなさい。)


日本は資源を求めて中国から南下しフランス領インドシナに進行しようと計画する。


その計画を事前に知ったイギリスは、日本の南進を阻止すべく、アメリカとともに日本への経済制裁を発動しようとする。


日本は極秘裏に南進の計画を立てているので、よもやその計画が漏れているとは思っていない。


イギリスが直接、日本に対して、南進をやめろ、というと、なぜその情報が漏れたのかと日本が騒ぐため、イギリスはあえてアメリカの新聞社にこの情報をリークして、あたかもその新聞記事で初めて知ったかのように、その記事が事実かどうか日本に確認するという回りくどい手法をとる。


それが功を奏して、日本は混乱し、南進の予定が5日ほど遅れる。


その間に、イギリスはアメリカと、日本への経済制裁の方法を詰めていく。


アメリカは、当時、国民の間に厭戦気分が広がっていたので、できるなら日本とは戦争をしたくはなかった。


在アメリカの日本大使とアメリカ大統領は、戦争回避のための交渉を重ねる。


そのなかで、日本が南進をしなければアメリカは経済制裁をしないという方向性で話が進んでいく。


しかし、アメリカの中枢には、ソ連のスパイが高官として侵入していた。


ソ連は当時、ドイツとの戦争に手を取られており、もしも中国にいる日本の関東軍に攻めてこられたら、対応できないと考えていた。


その意向を酌んだソ連のスパイであるアメリカの高官は、南進の中止だけでなく、中国からの撤退を日本に求める案を考えた。


それがいわゆるハル・ノートである。


それでもアメリカ大統領は日本の在アメリカ大使を信じて、中国からの撤退はとりあえず置いておいて、とにかく南進をやめるように、という方向で調整を進めようとしていた。


しかし、それに対して中国が反発。


なんとしても日本を中国から撤退させるべきであると主張する。


悩むアメリカ大統領。


そこに追い打ちをかける誤報が大統領に伝わる。


日本の艦船が16艘移動していることを、アメリカの現地の情報収集者は10~30艘として、アメリカ本土に伝達する。


それを知った、対日戦争強硬派が、大統領に40~50艘として伝達。


16艘であればたいした軍事的行動でもないが40~50艘となると大規模な展開になる。


この情報によってアメリカ大統領は日本への経済制裁を決断する。


日本側は、日本への経済制裁を交渉決裂と判断し、真珠湾攻撃へと結びつく。


いろんな機密資料が戦後数十年を経てイギリスなどで公開されてわかってきた新たな戦争の側面。


もちろん戦争は一面的には語れないし、そもそもほとんど証拠隠滅や空襲で焼けてしまって残っていない資料の中から、断片的な情報を組み合わせて、後世の人間がああだこうだと分析するのであるから、そこにはご都合主義的な解釈や想像が多分に混ざってしまうので、客観的な判断は不可能と思えるくらい難しいと絶望もしてしまうが、それでも、ぼくが思ったのは次のようなこと。


平和なときなら問題にはならないささいな誤解や誤差や誤報が、緊張状態にあるときには決定的に影響してしまう。


誰も望んでいない戦争にだって、誰が先頭を引っ張っているのかわからない状態で突き進んでいく。


よくいわれるたとえで、首を失ったにわとりのように、意思をもたない何者かが進んでいく。


首がないのだから、もはや誰も制御できない。


こういう状態になってしまったらもうどうにもならない。


だからこそ、緊張状態になること自体を可能な限り回避しなければならないということだ。


それができないから苦労しているんだけどね。