□ | (本好きな)かめのあゆみ

(本好きな)かめのあゆみ

かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

しかく、と読みます。


この作品を読み始めてすぐに感じたこと。


阿部和重は安部公房になろうとしている!


まあ、最後まで読むと、全然違うんですけど、のっけから始まる不条理で非現実的な事象を現実に持ってくるやり方というか世界のつくり方は、安部公房さんのカンガルー・ノートの世界を思い出させました。


はっきりいって、残酷描写の連続です。


カニバリズムとか。


血とか肉とかかなりスプラッターです。


夏の夜にはぴったり。


といいつつ、阿部和重さんの他の作品と同様に、残酷描写も淡々と、そして極端ゆえの滑稽さを醸し出しながら描かれるので、自らの想像力を上手にコントロールして抑制すれば、残酷嫌いなひとでも読めるでしょう。


筋書きがハリウッド映画的なので、もしもこの作品が映画化されたらどんな感じになるだろうか、と想像しながら読みました。


若いころのブラッド・ピットとかにやってほしい。


上手に映像化すれば、ファイト・クラブ並みの名作になりそう。


緻密な描写が読者に映像を喚起させるのも、阿部作品の特徴だと思います。


春、夏、秋、冬の4章からなるストーリー。


水垣鉄四は烏谷青磁に命じられるまま、角貝ササミを蘇らせるために、1年以内に4つのパーツを集めなければならない。


漫画的というかSF的というか、アイデア満載で読ませます。


ぼくがこれまでに読んだ阿部作品は、ピストルズとグランド・フィナーレなんですけど、それらと比べると数段読みやすくなっているような気がします。


もしかして、阿部和重さん、路線変更した?


いや、成熟してきたということでしょう。


あいかわらず尖っていると思います。


でもエンターテインメント性は強化されてますよ。


フィニッシュは一瞬、???、となりましたが、起きろ、ってことで合ってますか、どうですか?


ちなみに、あのくそいまいましい菜の花畑、ってなんなんでしょう?


東部蜂蜜生産組合と西部養蜂協議会、畜産養殖技術連合会と全国車両産業協会ってなに?


いつものようにほかの作品とリンクしていますか?


いずれにしても、さくっと読めるので、ちょっと怖いものを読みたいなあ、って夏の夜にはお勧めです。


心理的な恐怖ではなくて、視覚的なグロテスクさです。


世界構築の力量が物凄いですよ。





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阿部和重