ゆとろぎ | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

ゆとろぎ。


今朝の新聞で出会った言葉。


なかなかいいのですが、さてどういう意味でしょう?


国立民俗学博物館の教授なども経験した地理学博士の片倉もとこさんの造語だそうです。


答えを導く公式はこうです。


ゆとり+くつろぎ-りくつ=ゆとろぎ


もともとはイスラームの日常の中で大切にされている「ラーハ」なる考え方にふさわしい日本語として片倉さんが考えたそうですが、そういう宗教的背景は抜きにして、このゆとろぎを象徴的にあらわすおもしろいエピソードが紹介されていました。


ある国の商店で買い物していたところ、財布を忘れたことに気付いた片倉さん。


財布を忘れたと店主に伝えたところ、このノートに詩を書いてくれたらお代はいらないよ、と言われたという。


なんとおおらか。


っていうか単に「あげる」って言われるより「詩を書いてくれたら」っていう発想がゆたか。


商売っていうより、詩と物を交換する、あるいは贈与しあう、って感じなのかな。


この光景を想像しただけで、ちょっとした物語が描けそう。


思えば日本の禅における喫茶去(きっさこ)なんていうのもこれに通じるゆたかさがあるし、イタリアはナポリのカフェ・ソスペーゾなんかもそんな感じ。


貨幣価値を超えたひととひととのつながりが豊饒な時間を生み出すっていうのは、現代を生きるぼくたちが何者かによって忘れさせられていること。


いや、忘れさせられているなんてひとのせいにしちゃあいけない。


自分で生み出そうとすればすぐに手に入るはずのものなんだ。


だから。


たまには立ち止まってお茶でも飲みながらゆとろぎませんか。