多和田葉子さんの「雪の練習生 」を読んだときに文中に登場していたカフカさんの「ある犬の探求」。
気になっていた。
翻訳の違いで「ある犬の研究」になっていたが、ようやく読んでみた。
ひとこと。
難解。
もともとカフカさんの作品はぼくにとっては難解ではあるけれども、この「ある犬の研究」は輪をかけて難しい。
とても1度読んだだけでは得体が知れない。
思索する犬という点では、「雪の練習生」のホッキョクグマと同じだと思うけど、抽象表現にも程がある。
が、カフカさんのファンであるので、理解したいという思いは強い。
で、犬族と言ってはいるけれども、実のところ、人間のメタファーではないかと思いたくて仕方がない。
犬として読むも良し、人間の比喩として読むも良し。
二重の意味で読んでも良いと思う。
そのまま犬として読むとかなり滑稽、人間の比喩として読むと人間世界のやるせなさをつくづく考えさせられる。
後半に主人公である思索する犬の断食の話がはじまるのだが、ここで、同じくカフカさんの「断食芸人」を思い出した。
あの作品はもう何回か読んでいるけれど、まだ感想を書いていないので、またいずれ読み直して感想を残したいと思う。
もしかしてカフカさんは断食に興味を抱いていた?
それにしてもカフカさんにはどういうふうに世界が見えていたのだろう。
こういう作品を書けるっていうのが不思議だ。
そして、ほんとうに独特で理解が難しいのに惹きこまれるのは何ゆえか。
理屈で理解しようとせずに作品に感覚を預ける感じがいいのかな?
まあ少なくとも、誰にでもお勧めできる本ではないのだ。
――ある犬の研究――
カフカ
訳 池内紀