ムソルグスキーが大切な友人の遺作展で着想を得たという。
10点の絵画からひらめき紡ぎだされる音楽。
視覚から得た刺激を聴覚に転換するこの感性。
色が聴こえ音が見える。
ひとつひとつの曲が絵画のように屹立している。
絵と絵を結ぶ通路さえ音楽になる。
1 プロムナード
2 こびと
3 プロムナード
4 古い城
5 プロムナード
6 チュイルリーの庭
7 ブイドロ
8 プロムナード
9 卵のからをつけたひなどりの踊り
10 サミュエル・ゴールデンベルクとシュミュイレ(金持ちのユダヤ人と貧しいユダヤ人)
11 プロムナード
12 リモージュの市場
13 カタコンブ(ローマ時代の墓)
14 死せる言葉による死者への話しかけ
15 バーバ・ヤーガの小屋
16 キエフの大門
手元にはふたりのウラディーミル。
ホロヴィッツとアシュケナージのピアノの演奏がある。
楽譜が違うのだろう。
同じ曲でもまったく異なる2つの世界。
ホロヴィッツは過剰ともいえる演出でダイナミックに聴かせる。
ぼくのような素人にはとっつきやすい。
アシュケナージは繊細で流れるようにうるわしく音をきらめかせる。
演出は控えめでだからこそ玄人もうっとりだろう。
ラヴェルが編曲したオーケストラ版。
オリジナルのピアノ版の世界が忠実にかつカラフルに表現されている。
楽器の限定から自由になって広がっている。
このフレーズをどの楽器に演奏させるか。
的確な配役。
ピアノ版とオーケストラ版とどちらが好きかと問われてもどちらかひとつは選べない乙女心。
だってどちらも素敵なんですもの。
映画のように動く映像と音楽は相性がよい。
写真などの静止画でも音楽に合わせて何枚も組み合わせてスライドさせていくとそれもなじみやすい。
しかし1枚の絵に1曲の音楽というのはどうだろう。
冒険である。
そしてその冒険にムソルグスキーは見事に成功している。
願わくは1つの部屋の壁に1枚の絵画を掛けてそこに1曲の音楽を繰り返し流す。
たとえばバーバ・ヤーガの小屋の部屋みたいに。
それで10部屋の展示室を設けた展覧会の絵の展覧会というようなものを観にいってみたい。
――組曲「展覧会の絵」――
ムソルグスキー