どストレートなタイトルです。
角田光代さんと
穂村弘さんが
文字通り
異性について語ります。
もとい。
交換日記風に文章のやりとりをします。
こんな交換日記ならぼくもしたい。
いつだってだれだって恋の話はたのしいですね。
しかもこのお二人
いたってぼくとは近い異性観のような気がします。
自意識にまみれながらも
もてるための努力をすることが恥ずかしい
ってところとか。
特に穂村さん。
多くの男性作家さんが異性について語るとき
女性に対して過剰な幻想を抱いたり
偽悪家ぶったり
えてして気どった文章になりがちですが
穂村さんは実に正直に気どりなくありのままの疑問や感想を
文章にしたためられるんですよね。
ぼくなんかがもやもやしてことばにできない感情を
さらりと文章に捕まえるあたり
さすがの言語化センスです。
――その3 主人公である彼女たちの「真価」に誰よりも早く気づき、確信していること
うんうん確かにそれは重要ですよね。
だいたいうまくいかないんですけど。
と思いつつ読み進めていくと
やはり異性の解読はそう単純ではなくて
長編劇画的恋愛と
4コマ漫画的恋愛の
2つの在り方はその構造と目的からして
共存せしめません。
「真価」に気付くのも大事だけど
そもそも構造からして異性とはわかりあえるはずがないのだということに
目を背けるわけにはいかないのです。
そんな女性と男性の考え方のミスマッチを前提としても
それでも落ちてしまうのが異性の魅力なんですけどね。
角田さんの
初デートに出かける日にあたらしい洋服を着て鏡の前で試行錯誤した結果なぜかそれをやめてランニングを着ていくことになった
というおそろしい迷走のエピソードなんて
自意識過剰の時代の滑稽すぎるエピソードです。
異性について書かれた本はいろいろありますが
自意識過剰になりがちでさしておしゃれでもない文系男女
にはうなずくことの多いであろうめずらしいタイプの本でした。
これまでの人生で何冊も恋愛関連本を読んできましたが
この手の本を読んでも一向に上達の気配がありません。
この本を読んでもやはり異性の気持ちがわかるようにはなりません。
けれども
(理解はできないけれども)女性なりにいろいろ考えがあるんだなあ
(理解はできないけれども)男性なりにいろいろ考えがあるんだなあ
と思いながら読むと異性って不思議でおもしろいのです。
近頃のりにのっている角田さんと
あいかわらず日常のささいな一コマを抜群のセンスで言語化する穂村さん。
お二人ならではの愉快な本です。
――異性――
角田光代
穂村弘