雨強し。
風強し。
出掛けたい気持ちも萎えて自宅待機。
誰に命ぜられたわけでもなく待機。
激しく窓を打つ雨の粒。
粒というにはあまりにも大きくて。
ガラス面を縦に流れ落ちる雨粒の模様を目で追う。
窓にぶつかる際に立てる大きな音に怯えるでもなく。
2階の窓の外側がこの雨できれいになればいいのにと不精な期待を抱いてみるもそんなのはなから叶わぬはなし。
風が鳴っている。
家の壁や木々にぶつかる音。
雨と風が混じり合ってさながら荒れた海のような空。
そんな空とて所詮は家の外の出来事。
どう考えても雨や風に影響を受けるようには思えない強固な壁に囲まれながら外界の風景に思いを致す。
ばった、コオロギ、赤とんぼ。
秋の虫たち。
どこでこの雨や風から身を守っているのだろうか。
すすき、コスモス、彼岸花。
秋の植物たち。
雨や風から逃れるすべももたずに耐えているのだろうか。
ふと思う。
虫や植物を心配している場合ではない。
むしろ人こそ困っている。
この雨と風から身を守る家をもたぬ人々。
帰られぬ人々。
いまどこで何をしているのか。
帰る家を持ちながらやんごとなき事情で外出を余儀なくされ列車も止まり身動きがとれなくなっている人もいるだろうか。
おのおのが置かれた状況で見上げる灰色の空。
雲の上で待つ今宵の名月。