アンダンテ ―歩くような速さでー | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

ドライブもサイクリングも好きだけど

散歩がやっぱりいちばんいい。


今日の空は

まるで夏空の写真集のなかから抜け出してきたようで

嘘みたいな青さと

漫画みたいな入道雲が

どこまでもぼくを覆っていた。


おとなになる前の夏は

遊ぶのに忙しかったけれども

それでも空を延々と眺める時間はあったように思う。


おとなになってからは

いつの間にか

ゆっくり雲の流れを追う

なんてことはしなくなったけど

なぜだか今日はよく空を見上げた。


生き物のような雲

とはいうけれども今日の雲もまさにそうで

散歩中にどんどん入道雲は形を変え

というより成長するサンゴのように大きくなり

漫画みたいだったのがみるみるうちに

おそろしいスーパーセルに変わってしまいやしないかと

心配になるほどだった。


昨日の豪雨の記憶がよみがえる。

傘を持ってくるのを忘れてしまったが

昨日のような雨ならば

傘なんてなんの意味もないだろう。


とはいえまだ雨は降ってこないので

気持ちよく散歩を続ける。


ぼくは散歩中

NHK-FMのきらクラ!

を聴いている。


なんでも

ふかわりょうさんの誕生日だったらしく

パートナーでチェリストの遠藤真理さんが

サプライズで贈った曲が素敵すぎた。


ペーター・ハイドリッヒさんが作曲した

“ハッピーバースデイ変奏曲”から。


これおしゃれ。


こんなの贈られたら

うれしくって好きになっちゃう。


と思っていたら今日のきらクラ!はさらに凄かった。


来週のBGM選手権のお題が

カフカさんの変身の冒頭。


うわ

これはぼくも挑戦しなくちゃ。


BGM選手権の応募者はいつもかなりハイレベルで

聴きながらうっとりするだけだったのだが

カフカさんの変身ならば

それを愛読書とするぼくが

手をこまぬいているわけにはいかない

と奮い立ったのだった。


なんて思いながらいつもの散歩道を歩いていると

いつもの散歩道で見慣れた風景であるにもかかわらず

目に入った看板があった。


マスカットの和スイーツの看板。


エメラルドグリーンのマスカットの

涼しげな写真。


ぼくは基本的に辛党で

スイーツは滅多に欲しいと思わない。

(出されたらおいしくいただくが。)


ましてや和スイーツにはもっと手が出ない。


けれども年に数回

スイーツが欲しくなることがある。


今日がまさにその日だった。


吸い込まれるように入ったことのないお店に入った。


宗家 源 吉兆庵


そして看板で目にした涼しげなお菓子の名は

岡山県産 マスカット オブ アレキサンドリア

陸乃宝珠(りくのほうじゅ)。


1個およそ250円也。


うわ

贅沢。


マスカット1粒で250円。


こんなの誰が食べるの?

と思いつつも1個だけ買うのもなんなので(なんなのでって何?)

6個入りを購入した。


そして

多くのスイーツ好きのひとがそうであるように

なんだかうきうきしながら

散歩の家路をたどっていると

ぽつりぽつりと雨粒が。


これはやばい

思えば南の空は真っ暗だ

とは思ったけれども結局雨にやられることなく

家に到着。


散歩終了。


さっそく陸乃宝珠を1粒つまむ。


――お砂糖をまとった薄い求肥の中からあふれだす、マスカット オブ アレキサンドリアのみずみずしい果汁。やわらかな求肥、お砂糖の舌ざわり、果実の皮がはじける食感と爽やかな味わい。そのすべてが絶妙に調和するこだわりの1粒でございます。――


との売り言葉にたがわず

まさにそのとおりのおいしさ。


うま

こら250円の値打ちあるわ


と感激しつつ


これが求肥というやつか

食べたこともあるし

聞いたこともあるけど

やっとことばとものが一致したわ


なんて思っていた。


こんなにおいしかったら

いくつでも欲しくなるけど

しょっちゅうこれを食べられるのは

どこぞのセレブリティだけですね。


ぼくがそれをしたら瞬く間に破綻です。


ちなみにお店には

1個で千数百円と思われる

桃のお菓子も置いてありました。


まあ贈答用ですよね。


こういうものを贈られる人にわたしはなりたい。


なんだか散歩の話から着地点がえらく変わってしまった。


こういうのもアンダンテ

ですかね?