この前の新聞に
劇作家で俳優の野田秀樹さんへの
インタビュー記事が掲載されていたんだ。
彼の発言には
すごくどきりとさせられたね。
目をみはるというか。
自作の
TEE BEE(英語版)
っていうお芝居で
来年の1月から
ニューヨーク、ロンドン、香港、東京と
ワールド・ツアーをおこなうらしいのさ。
THE BEE
は残念ながら舞台では観ていないけれど
映像では観たよ。
英語版も日本語版もね。
こんなにシリアスなお芝居に
お金を払って観に来てくれる客なんて
いるのだろうか?
っていぶかしく感じるくらい
衝撃的な演出だったんだ。
原作は筒井康隆さんの
毟(むし)りあい。
これも読んだよ。
えげつない内容で目を覆わんばかりだった。
短編だけど読後感は最低最悪だった。
吐き気すらもよおしたのさ。
けれども
ここまで極端ではないにしても
日常に潜む人間の狂気って
案外こんなもんじゃないのかな。
作品のテーマは
復讐の連鎖
とか
大衆やメディア、権力批判
だとぼくは思ってる。
野田秀樹さんは
2006年にロンドン初演で
大成功を収めたこのお芝居を
いずれはニューヨークでも
上演したいと考えていたらしいんだ。
つまりは9・11の当事者である
アメリカ人たちの反応が知りたいってこと。
事件から10年も経てば
彼らにも少しは冷静にこのお芝居を
観てもらえるかと思っていたが
ビンラーディンが殺害されたときの反応を観ると
状況は変わっていないかもしれない。
ともらしてる。
さて来年のニューヨーク上演で
どういった反応が返ってくるのだろうね。
楽しみでもあり心配でもあるよ。
昨年から今年にかけては
オウム真理教の地下鉄サリン事件を題材にした
ザ・キャラクター
など「信じる」ことのなかにある狂気を三部作で
あぶりだしていたんだって。
信じることのなかにある狂気
か。
ぼくも何かを信じたい衝動に駆られることがある。
けれどもぼくなりに
信じることの恐ろしさも感じていて
できるだけ信じることに逃げないように
気をつけているんだ。
信じるってことはすごく力強いことで
いちど覚悟を決めると
とてつもないエネルギーが湧いてくる
っていうのはあるよ。
だから
どうしても何かをやり遂げなければならないときには
ぼくもこの信じる力を発動させる。
けれども
できるだけ濫用を自らに禁じているんだ。
信じることが
妄信とか盲信とかにつながっていくようで
不安なんだよね。
できるだけ優柔不断に
なにごとも決めあぐねて
生きていこうと思っている。
これも逃げ道なんだけれどね。
おっと
野田秀樹さんのインタビュー記事から
逸れてしまったみたいだ。
この記事で
とても胸に響いたことばがある。
自身が芸術監督を務める東京芸術劇場の
改修後の再オープンで上演するために
執筆している新作についてのコメント。
あくまでもインタビュアーのフィルターを通じた
ことばなので注意が必要だけど
安易に時流に乗っからない
野田秀樹さんらしい問題提起の仕方だと思うんだ。
それを記事から引用して締めくくることにするよ。
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日本人は今、大震災のもやもやを抱えて、どんなものにも震災のメタファーを見てしまう。表現者としては、どのくらいそこから遠くにいられるかという思いで書いている。いつかは感じたままに出てくることがあると思いますが、震災を利用するような表現はしたくない。
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