WTC 9/11       スティーヴ・ライヒ | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

衝撃。

圧倒的。


昨日の午前中

いつものように車の中で

ゴンチチさんの

世界の快適音楽セレクション

を聴いていたら

この曲が紹介されていた。


それまでの暢気な雰囲気を

一瞬にして凍りつかせる

威力抜群の現代曲。


現代音楽作曲家の

スティーヴ・ライヒさんによる

この弦楽四重奏のための曲を演奏するのは

クロノス・カルテットさん。


WTC 9/11


事件の現場に残された

数々の当事者の証言を

コラージュし

ヴァイオリン

ヴィオラ

チェロ

の調べにのせた曲。


目の前に

恐怖と戸惑いと哀しみが

並々ならぬ臨場感を帯びて迫ってくる。




第1楽章「9/11」


(ボストン発 ロサンゼルス行き

進路を南に 誤った方向に飛行している)


(パイロットの応答なし

パイロットの応答 一切なし)


(旅客機がWTCに突っ込んだ)


(出動可能な すべての救急車を)


(旅客機がビルに直撃した)


(大規模な崩壊発生)


(緊急事態 がれきに閉じ込められた)


(2機目の旅客機が)


(緊急事態)


(息ができない)


(ビルが崩れていく)




第2楽章「2010」


(グラウンド・ゼロから 4ブロック先の学校で

授業を受けていました)


(子供を連れて 学校に向かっていました)


(1機目の旅客機が

頭上を越えてビルに突っ込みました)


(見上げると ビルが炎上していました)


(でもみんな事故だと)


(私には事故じゃないと すぐに分かった)


(みんな走って叫んでいる)


(2機目の旅客機が突っ込んだ)


(事故じゃない)


(人が ビルから飛び降りている)


(最初の救急車が到着した)


(混乱の中で 誰も

どうしたらいいか分からなかった)


(地面が揺れ始めました)


(ビルが崩れてきた)


(命からがら逃げました)


(突然 外は真っ暗に)


(ほこりが覆いつくし

目の前さえ見えなかった)


(みんな自分が死んだと思いました)


(静かだった

ほこりだけが街通りに広がって)


(3千人が殺されました)


(何が起きているの?

これから何が起きるの?)





第3楽章「WTC」


(遺体はマンハッタンのイースト・サイドの

大型テントに移されました)


(私はここに座り

夜を徹して詩篇を詠唱します)


(来るべき世界

それが何か私には分からない)


(世界は ここに

世界は 今ここにある)




演奏後の満足感によるどや顔は

ぼくの好みではないし

事件に便乗した売名行為だと

批判する声ももちろんあるだろうが

ぼくとしては

作曲家の試みと演奏者の表現に

静かに胸を撃ち抜かれたのだった。




-WTC 9/11-

演奏 クロノス・カルテット

作曲 スティーヴ・ライヒ