川上未映子さんのサイン会に行ってきましたよ | (本好きな)かめのあゆみ

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ゆうべ

川上未映子さんの新刊

すべて真夜中の恋人たち

刊行記念の著者サイン会に参加するため

紀伊國屋書店梅田本店に行ってきました。


先週の水曜日に本と整理券を受け取りに

店頭に行ったときには

まだ定員の100人に達していなかったので

もしかして売れ行き不調か?

と心配していましたが

行ってみれば何のことはない

盛況でした。


ぼくは多分

ちょうど50人目くらいだったのではないでしょうか。

なんとかいうかぼくの前に並んでいたのは

あいまいな感じの人なのでした。


川上未映子さんが登場するまでの間に

サインと一緒に書いてもらうための

自分の名前とメッセージを記す

カードを渡されました。


ぼくのメッセージは

自前のカードで事前に用意していたので

もらったカードには当たり障りのないことだけを

書きました。


おとなしく並んでいるみんなも

いろんな思いでこのカードにメッセージを

書き込んでいるんだなと想像すると

名も知らぬ人々に親近感を覚えたりしたわけです。


知らない人と作品の感想を述べ合うという妄想。


やがて川上未映子さんが登場。

拍手でお出迎え。


なま川上未映子さんは去年4月の

読書サロン以来でしたので

お久しぶりですー

って心のなかでひとりつぶやきました。


本の装丁に合わせてだと思いますが

くびまわりに雪の結晶のような模様がはいった

紺色のワンピースでした。

ファッションの知識が乏しいので

あまり的確に表現できませんが

まあ何にせよよく似合ってらっしゃいましたよ。


並んでいるぼくたちに

簡単に挨拶されてから

サイン会場である小部屋に入られました。


先頭から2~3人ずつその小部屋に入っていって

サインをしてもらうシステムのようです。


澄ました顔で並んでいた人々が

サインをもらい終えて小部屋から出てくる瞬間は

ほぼ例外なくうれしそうな笑顔になっているのが

象徴的です。

サイン会で好きな作家に会える幸福。

まさにファン・サービスです。


ときおり小部屋の中から談笑の声が聞こえてきます。


うわあ

いったいどんなことを言えば

この短時間のやりとりで

談笑なんかできるんだろう

とちょっと不思議な気分になりました。


だって1人あたりせいぜい1分くらいなんですよ。


そういうわけで待ち時間の間に

なにか短くて目立つコメントを

ぼくも考えることにしました。


ふと思いついたのが

とあるブロガーさんの記事で

先日愛知県の蒲郡市で行われた

穂村弘さんの短歌講演会終了後のサイン会で

名前の漢字を度忘れした穂村さんが

ゲシュタルト崩壊しちゃった

と言っていたというエピソードです。


確かにサインというのは

延々自分の名前を書き続ける作業。


ぼくなら自分の名前を連続10回も書けば

あっけなくゲシュタルト崩壊しそうです。


ならば50番目くらいのぼくのサインを書くころには

川上未映子さんもゲシュタルト崩壊していても

おかしくないぞ

と。


そこで考えたフレーズがこれ。


「ゲシュタルト崩壊してませんか?」


しかしいきなりこれでは

意味が通じないかもしれない。

不審ですらある。


「先日穂村弘さんがサイン会でゲシュタルト崩壊した

って言ってたそうですよ。

川上さんはまだ大丈夫ですか?」


ちょっと長いかもしれない。

えらそうでもある。

それにもしかしたら既に誰かが言っているかもしれない。

誰でも思いつきそうなことを

さも気の利いたせりふであるかのように

したり顔で言うのはかなり格好悪い。


「ゲシュタルト崩壊してませんか?

ってもう誰か言いましたか?」


ああ

回りくどい。

そもそもサイン会でゲシュタルト崩壊するのは

作家業界では有名な現象かもしれない。


「サイン会で何回も名前を書いていて

だんだん字のかたちが分からなくなることを

ゲシュタルト崩壊した

ていうのは作家業界ではよくある話ですか?」


そんなこんなで待ち時間もあっという間に過ぎ

いよいよぼくも小部屋に通されます。


編集者さんかもしれないですが

サポートの人に本を渡すと

本に挟んであるぼくのメッセージカードを見つけてくれて

手紙は作家に直接渡してください

と。


ちなみにぼくがメッセージカードとして用意していたのは

先日

中之島の国立国際美術館へ行ったときに入手した

ジャコメッティの鼻の写真のポストカード。

メッセージを書けるスペースは表面の下半分だけなので

文字数は少なくなるけど

あんまり長いと読むほうもたいへんだろうな

という配慮によるセレクト。


本がサポートの方から川上未映子さんに渡され

ジャコメッティのメッセージカードは

ぼくから川上未映子さんに渡しました。


ぼく「こんばんは。」

サポートの方「わあ、お手紙ですか。」

ぼく「ファンレターなるものを書いてみました。」

川上未映子さん「ありがとうございます。」

(ぼくのメッセージカードの文面を見て)

サポートの方「あ、ひじり。」

川上未映子さん「なになに?」

(と言いながらメッセージカードを読む。)

ぼく「あ、やっぱり聖はひじりって読むんですか?」

川上未映子さん「そうです。」

サポートの方「良かったー。ひじりは女性には人気があるんですけど男性は嫌う人が多くて。」

ぼく「ひじり、痛々しいですよね。」

川上未映子さん「痛々しいです。」


サインを書きながら

おおむねこういうやりとりがあったあと

最後に握手しておしまい。


なんか緊張していたので

握手のことはよく覚えてません。

手の大きさとかあたたかさとか

もっと印象に残したかったのに。(変態)


すぐにその場で

メッセージカードを読んでくれるとは思ってもみなかったので

こういうやりとりになることは想像もしていませんでした。


石川聖さんが手負いの獣のようで印象に残りました

って書いてたんですね。

それで上記のやりとりに。


ぼくとしてはゲシュタルト崩壊の話よりも

作品の内容に触れた話ができたので

うれしいったらなかったです。


もちろん

小部屋を出た瞬間のぼくの顔も

夢見心地のニヤケ顔だったのに

相違ございません。







ああすみません。


さすがに今日の記事を

ここまで読んだ方はいらっしゃらないかとは思いますが

もし読まれた物好きな方がいらっしゃったら

気持ちの悪い変態ミーハーの

妙なテンションでのたわごととして

早期にお忘れになることをお勧めして

締めくくりたいと思います。


ありがとうございました。