うわっ。
これは夫婦善哉とは異なったおもしろさ。
文体も素直でおとなである。
こういう文章も書く人だったのね。
私小説とか回想とかかな?
大阪は木のない都だといわれているが、
との出だしに興味津々。
そう
確かに大阪はたとえば東京に比べると
木が少ない。
それは
大阪が昔々は遠浅の海だったからで
東京は同じ頃
台地と海とが入り混じっていたため
台地部分の森はいまだに残っているから。
そういう地形的な違い。
けれども
本文にもあるとおり
大阪には上町台地があり
そこは東京の台地と同じように
昔からの森が残っている。
まあ
それはともかくとして
そんな上町台地のとある町での物語。
町の活き活きとした描写に載せて
主人公とレコード店の家族とのやりとりが
とても淡々としながらも
情感豊かに描かれている。
悲しくもあり暖かくもあり。
ああ
戦中はつらい時代だったに違いなく
二度と同じ時代はやってきてはならないが
それでもそこで生きる人々の
誠実さや思いやりや慈しみのこころは
ぜひとも今の時代に取り戻したい。
無理かなあ。
掌編の秀作として
芥川龍之介さんの
蜜柑
とか
太宰治さんの
満願
とかを思い出しながら読みました。
この時代の小説は
やっぱり好きだな。
現代の小説でも
同じような力量の掌編あるいは短編は
数多く発表されているのだろうけれど
時代のフィルタを通過してきている
この空気感がぼくの好物。
-木の都-
織田作之助