預言者の名前 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

久しぶりに再読しました。


あらためて

刺激的な本だな

と思い知りました。


テーマは

宗教と信仰

でしょうか。


主人公のワタルが

徹底的に繰り出す表現は

まさに人を食った小説家

島田雅彦さんの

面目躍如といった

感じです。


屁理屈のように思える怪しい言動は

からかっているようにみえるけれども

実はすごくまじめに的を射ているという

そんないくつもの表現に瞠目です。


前半の

改宗者の手紙

マリ子の告白

のところは

もう何回も読んでいるけれども

衝撃的な内容です。


逆説的だけれども

既存の宗教がどんどん解体されて

そして人間どうしが分断されて

唯一絶対神に甘えることなく

自分の神を心に創出して

自分で考え行動しつながる人々の誕生をめざす

そういう考え方がなんともぼくにはしっくりきます。


同じ神を信仰しているようにみえて

実は信仰とは極めて個人的な経験です。


同じ名前の神であっても

信者にとってはそれぞれ微妙に異なるに違いない神のイメージ。


違う名前の神であっても

その教えは実はほとんど瓜二つだったりして。


神とは人の数だけ存在する

といいたくもなります。


きわどいテーマではあるけれども

それを得意の軽々とした文章で書き上げた

島田雅彦さんの名作だと思います。


人々を安心させたり

魂を救済したりする神ならば

ありがたいのですが

争いを生んだり

争いに利用されたりする神は

やっぱりおかしいと思うので

ムルカシであったり

ワタルであったり

荒唐無稽な考え方で生きている

登場人物たちにはとても憧れます。


巻末の

中沢新一さんの解説も

的確で端的で名文です。


島田雅彦さんは

旅によって世界を我が身にフィットさせていく

と。


青い鳥が

身近にいるのに気づけるのも

旅をして回り道をしたからこそ。


すぐ近くにあるのは分かっていても

遠回りしないとたどり着けないものは

いたるところにあって。






-預言者の名前-

島田雅彦