人質の朗読会 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

朗読

というキーワードに惹かれて

手にとった1冊。


朗読好きのぼくとしては

押さえておかなければなりません。


そして表紙は

今村夏子さんの

こちらあみ子

と同じく

今をときめく

土屋仁応さんの作品

小鹿

が飾ってます。


デリケートで

触れがたい造形と彩色が

見ようとするぼくを

緊張させます。


その目元や耳元のピンク。


内容だけを読んでいると

虚実入り混じった

それぞれの人々の

回想物語を寄せた

短編集なんですが

その前提となっているのが

この回想物語の主人公であり作者でもあるのは

地球の裏側で反政府ゲリラに拉致され

人質となった8人であるということ。


その8人が

人質生活が安定してきたと思える頃に

なぐさみに自分のこれまでの印象的な出来事を

おのおの文章にまとめて

それを発表する朗読会を催した記録という体裁をとっています。


それが

ただの短編集に終わらせない重層的な効果を

それぞれの短編に与えています。


まあ

個人的には

人質の朗読会

というタイトルに相応しい

もっと重く哲学的な物語を期待していましたが

淡々とした作品でした。


ちなみに

この本のなかで

もっともぼくが気に入った作品は

冬眠中のヤマネ

です。


-人質の朗読会-

小川洋子