SFではありません。
大阪大学基礎工学研究科教授などを務める
ロボット工学者
石黒浩さんの
研究を経て得た知見を
ぼくたちにも分かりやすくまとめてくれた1冊です。
理系が苦手なぼくでも
人間とは何か
自分とは何か
っていう石黒浩さんの問いかけが
しっくりきて
興味深く楽しめました。
平田オリザさんの演出による
ジェミノイドFのアンドロイド演劇を
紹介した章では
覚えず涙しそうになりました。
ジーンときました。
主に
石黒浩さんが自身をモデルにした
ジェミノイドHI-1と
医療関係で働く一般人の女性をモデルにした
ジェミノイドFに
関わる興味深い現象を語ってくれます。
ジェミノイド
っていうのは
ふたご座をあらわすジェミニと
~もどきをあらわすoidをあわせた造語で
自分の分身のようなイメージです。
簡単にいえば
操作者の表情を反映しながら遠隔操作で対話するのが
このジェミノイドの特徴です。
自然にみせるために
顔の表情はもちろん上半身の呼吸に伴う動きなども再現します。
で
何より興味深いのは
実在する人間の分身ともいえるこのジェミノイドを巡る
人々のこころの変化です。
自分自身でこのジェミノイドを遠隔操作していると
だんだんジェミノイド自体が自分自身のように思えてきて
ジェミノイドが誰かに触れられると
自分自身も触れられているような気分になったりします。
また
石黒浩さんは
自分自身よりも研究室のほかの人が操作したほうが
石黒浩さんらしく動かすことができますが
一般女性をモデルにしたジェミノイドは
当の一般女性自身が最も上手に動かすことができます。
自分自身をいかにみているか
という違いがみてとれます。
さらにアンドロイド演劇で
ジェミノイドFを操作した女優と
モデルの一般女性の心情もおもしろいです。
自分の身体が乗っ取られたような感覚。
極めつけは
5年前に製作したジェミノイドHI-1と
5年後の自分自身の違いを調整するために
石黒浩さんがとった行動です。
ダイエットに取り組む手法などが
なんだか勉強になります。
さすが科学者です。
ほかにもいろいろとおもしろいエピソードが載っていて
楽しめます。
自分でイメージしている自分の外見は
写真の自分か鏡の自分か
とか。
鏡の自分は反転しているので
他人から見られている自分とは違うんですよね。
せっかくの化粧も
実際は自分のイメージどおりにはなっていないという。
とにもかくにも
ぼくとしては
ジェミノイドFのモデルの女性が美しくて
そしてジェミノイドFにも違った美しさがあって
ぜひともセットでお付き合いさせていただきたいような
そんな夢想を抱きました。
-どうすれば「人」を創れるか
アンドロイドになった私-
石黒浩