ぼくには一生経験できない
妊娠というものがあるけれど
妊娠している女性は
自己のアイデンティティを
どう捉えているのだろうか。
妊娠している状態で
私
というとき
彼女は
どこまでの範囲を
私とみなしているのか。
胎内の生命は
私と分かちがたく私なのか
それとも
胎内の生命は私ではなく
それを除く部分が私なのか。
妊娠している女性が
胎内の生命を含めて
私たち
と言いたくなることはあるのだろうか。
たったひとりのときでさえ
私
の定義付けには
ほとほともてあましているというのに
妊娠するという現象は
ことほどさように
難解なのであろうか。
というようなことを考えるのは
永遠に妊娠することができない
おとこの馬鹿馬鹿しい妄言にしか
過ぎないのだろうか。
ところで
ギリシア神話で
山や川、森や谷を守る女性の妖精がいて
彼女たちのことを
ニンフ
というそうな。