アースダイバー | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

ずーっと読みたいと気になりつつも

なかなか手が出なかった本です。


ようやく2月に購入して

このほど読み終えました。


読むというより

散歩するという感じです。


脳内散歩。


しかも

空間移動だけではなくて

時間移動もする散歩です。


縄文時代の東京は

あちらこちらに海が浸食していて

海と陸とが複雑に入り組んでいたそうです。


当時は地球が熱かったので

南極の氷や各地の氷河も

溶け出していたので

海面が今よりも随分高かったんですね。


もともと陸だった洪積層と

もともと海だった沖積層は

地質学の研究で分かっていて

それをもとに縄文海進期の東京の地図を作成し

現在の東京の地図と重ね合わせると

あら不思議。


現在の東京のそれぞれのまちの性格は

縄文海進期の地形の影響を

もろに受けているわけです。


海面の高さは変わり

まちの近代化も進み

表層は全く異なるように見えますが

どんなに表面が変わっても

もとの地形は人間の力では

変えられない。


それだけ力強い

地形のパワー。


中沢新一さんの

膨大な学識と

なにものにもとらわれない自由な想像力

さらにユニークな着眼点と文章で

東京のまちの表層を引き剥がし

原初的で神話的な物語を紡いでいきます。


ときには

ちょっと想像力を膨らませすぎでは

と思うほど筆が走りすぎているように

みえるところもありますが

ダイナミックな神話の物語は

きっとそういうふうにできていくのでしょう。


各章のタイトルを見るだけでも

ワクワク感が伝わってきますので

紹介しておきます。





プロローグ 裏庭の遺跡へ


第1章 ウォーミングアップ 東京鳥瞰


第2章 湿った土地と乾いた土地 新宿~四谷


第3章 死と森 渋谷~明治神宮


第4章 タナトスの塔 東京タワー


異文  東京タワー


第5章 湯と水 麻布~赤坂


第6章 間奏曲 坂と崖下


トーキョーダイビング(フォト・ギャラリー)


第7章 大学・ファッション・墓地 三田、早稲田、青山


第8章 職人の浮島 銀座~新橋


第9章 モダニズムから超モダニズムへ 浅草~上野~秋葉原


第10章 東京低地の神話学 下町


第11章 森番の天皇 皇居


エピローグ 見えない東京





巻末をはじめ

多数のアースダイビング・マップと文章を

行きつ戻りつしながら読むのは

まさに良質のガイド・ツアーです。


ぼくは東京人ではないので

あまり東京のまちには詳しくありませんが

ブラタモリでもかなり触れていたので

ある程度イメージしながら読むことが

できました。


ましてや

東京人なら必読の書だと思います。


たとえば渋谷のまちを眺める視線も変わるかも。


文章がとにかくステキなので

東京という土地の物語として読んでも

楽しめると思います。


大森克己さんの写真も

この本のコンセプトに

絶妙にマッチしています。



-アースダイバー-

中沢新一