戦争と一人の女 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

この短篇集

時代の空気感とか

そういうものを前提として読んじゃいけないんだな

って気づきました。


あくまでも

終戦前後を舞台として借景した

寓話あるいはお伽噺として読む方が

よりストレートに伝わってくるように

感じます。


現実の物語だと考えると

こういう男女の結びつきは

不自然にも感じますが

寓話と思うと

デフォルメされている分を割り引いて解釈して

却ってこういう関係も洒落てるな

ってそういうふうに思えます。


坂口安吾さんの描く作品の女性像は

とかく神聖化と侮蔑化(むろん神聖化の裏返し)

の間を極端に揺れ動くのですが

肉体そのものの真実の感動とよろこびを知らぬ

との表現も

なんかマニアックな男側からの

一方的な女性批評のような

そんなふうに読んでしまいます。


そんな女とのやりとりも

まさに男の独り相撲。


女はそんな男の妄想を知ってか知らずか

好感と憎しみを行ったり来たりします。

(それも男からみた解釈)


戦争の終結で関係も破綻するであろうと考える

二人であるが故に

安心してこの不安定な関係を

維持できている

その時の精神状態っていうのは

もしかしたらこういうことなのかもしれません。


別れる前提

しかもひどい別れ方を予想して

関係するふたりっていうのにも

酔えそうです。


ある破滅的でありながら耽美な

男女の感情(男目線)の物語です。


この後

続戦争と一人の女

という物語があるんですが

こちらは

同じストーリーを

女目線で描いた作品です。




-戦争と一人の女-

坂口安吾