これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学 | (本好きな)かめのあゆみ

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かしこいカシオペイアになってモモを手助けしたい。

ようやく読み終えました。


最初は凄く刺激的で

興味深くて

ページを繰る手も速やかでしたが

中盤から

難易度が上がったのか

暑さのせいか

スピードダウン。


でも第10章のラストは

この本のまとめとも言うべき内容で

最初から諦めずに読んで良かったなあ

と思えたのでした。


邦題はなんとなく処世術っぽくて

俗っぽい感じになってますが

オリジナルは

JUSTICE

What’s the Right Thing to Do?

なので

哲学的なタイトルです。


こういう本の感想って難しいですね。

学生ではないので

うまく内容をまとめる気はさらさらありませんし

できません。


ですから普通の小説の感想のように

思ったことを思ったままに。


ずいぶんむかし

なんとかファンドとか

なんとかドアとか

なんとかヒルズ族とか

の人々が景気よくやっているときに

ぼくが思っていたこと。


金を派手に儲けるのはいいんだけど

あんまり目立ったら損するのになあ

庶民の反感を買ったらやばいなあ

できればひっそりと儲けるか

あるいは慈善事業に寄付するとか

した方がいいんじゃないかなあ?


彼らには彼らの正義

(自分が努力して儲けた金に

文句をいわれる筋合いはない)

があったわけですが

日本社会で生きている以上

その正義が日本というコミュニティ(共同体)の

共通善でなければ

いずれほころびが起きると。


所得の再配分の是非


大儲けしておきながら破綻した金融機関への

大規模な税金投入と

その幹部への多額のボーナス支給の是非


戦争に伴って心的障害を負った兵士への

勲章授与の是非


裕福な国の人間が

途上国の女性の子宮と胎盤を借りる代理母の是非


同性婚の是非


大学入学枠でのマイノリティへの

人種優遇措置の是非


徴兵制度と職業軍人と外国人傭兵の是非


組織的に判断が必要な事例は

ぼくたちの生活に関わる全てであり

しかもそれぞれの立場は永久に交わらないように

思える状況。


しかし

合意は不可能と最初から判断を避けていると

集団としてはいずれモラル・ハザードが生じ

存続の危機に瀕する。


かつては奴隷制度について

道徳的に問題とされなかった時代もある。


女性に選挙権がないのに

疑問を持たなかった時代もある。


けれども現在

奴隷制度を賛美する人も

女性に選挙権を持たせないように主張する人も

ほとんどいないであろう。


つまりは

議論を避けるのではなく

議論を続けることによって

合意をあるいは共通理解を求める

努力について諦めてはいけないという

ことである。


この本は

とにかく読者に考えさせるための

話題の提供の仕方に優れています。


身近なことで誰もが自分の意見を持っている

ようなことども。

しかも案外十人十色に分かれるような

微妙なテーマ。


もう少し涼しい秋に出会っていたら

もっと知の冒険を楽しめていたかもしれません。


翻訳の力にも敬意。



-これからの「正義」の話をしよう

いまを生き延びるための哲学-

マイケル・サンデル

訳 鬼澤忍