夏目漱石の
こころ
を読み終えて
ふと
島田雅彦さんの
彼岸先生
を久しぶりに読み返したくなり
書店を2軒巡るも
出会えず
念のため
図書館に
立ち寄った。
図書館で検索すると
書庫にあるとのことだったので
職員の方にお願いして
出してきてもらった。
せっかくだから
もう1冊くらい
借りようと
書棚を物色し
小川洋子さんの
博士の愛した数式
を見つけたので
それをあわせて
貸し出しカウンターに向かった。
受付のお姉さんが
手際よく貸し出し処理を
してくれているときに
「鷹師さん、鷹師さん」
とぼくを呼ぶ声が
どこからか聞こえてきた。
マスクをしているので
咄嗟には気づかなかったが
受付のお姉さんが
ぼくに呼びかけているようだ。
「あれ、ぼく、なんか変なことしてるかな。
返し忘れている本でもあったかな?」
と一瞬ひるむ。
しかし
そのお姉さんの目は
ふだん図書館で本を
借りるときの
ある種の
事務的な目ではなく
親しいひとを見るときの
優しいまなざしに
違いなかった。
「私です。
○○です。
覚えてませんか?」
むむ
もしやこの人は
ぼくの知っている人か?
いや
こんな人には
覚えがないぞ。
よくみると
マスクの上からでも分かる
ぼく好みの美形。
こんな
きれいな人に
呼びかけられる
覚えはないぞ。
○○さん?
やっぱり分からない。
でも
せっかくだから
勘違いでも
この人の
知ってる人に
なりすませば
美女と
お近づきになれるかもしれないぞ。
「△△の○○です。」
あー
思い出した。
ぼくが
以前ドラムを習っていた
△△スタジオの箱入り娘で
ピアノを教えていた○○さん
ではないか。
その後
しばらく旧交を
温めようかと思ったが
次のお客さんが並んでいたので
2言3言
言葉を交わしただけで
去らねばならなかった。
よもや
図書館で働いているとは
思わなかったなあ。
しかも
例の音楽スタジオと
この図書館とは
少し離れているので
まさか
ここで会うとはねえ。
ぼくはドラムだったので
○○さんには習ってないんだけど
彼女は
箱入り娘で看板娘だったから
受付なんかもやっていて
待ち時間に
ちょっと世間話をするのが
楽しみだったんだよね。
図書館で働く
ピアノ教師
っていうのは
ぼくにとっては
最高に好みの属性
だからね。
図書館に行く楽しみが増えたな。
不純な動機だけど。
それにしても
借りた本が
エッチな本や
グロテスクな本
じゃなくてよかった。
でも
これからは
借りる本にも
気をつけないといけないなあ。
思わぬ場所で
意外な人と出会うことを
考えると
ふだんから
変なことはできないなあ
と少し恐ろしくもある出来事でした。