しばらくこの空を仰いでいると
昔のことを思い出す
オレがまだこの船に乗る前のことだ
バーベキューで誕生日を祝ってもらったこと
あの時の空は格別に広かった
オレの家族はこういうイベント事が好きで、
誰かの誕生日や記念日には何かしらいつもと違う形でその日を祝う
オレの誕生日は夏だから、バーベキューになる
親父の作る料理はあんまりおいしくなかったけど、
気持ちがこもっているから、残さずに食べていた
母親もこういう祝い事の日にはいつも忙しい時間の合間を縫って
プレゼントを買ってきてくれていたんだ
だけど、こういう日になると
姉さんだけはなぜか不機嫌になる
それは自分の誕生日の日でも
オレが最後に地上で過ごした祝い事は
姉さんの誕生日だった
相変わらず不機嫌で
顔すら見せずに部屋にこもっていた
オレはそんな姉さんの態度に
イライラしてきて、「どうしてそんな感じになるんだよ」と怒った
そしたら姉さんが「別にいいじゃない、私の勝手じゃない」と逆に怒られてしまった
姉さんとはそれっきりの会話だ
姉さんはいつもは元気なのに、
家族の祝い事となると顔を見せない
だけど、この船に乗る前の日、
姉さんがオレに砂時計をくれた、無言で
どうしてこんなものをくれたかは分からないが、
姉さんのことだから、きっとこういう形でしかオレを見送れなかったのだろう
この船はどこまでオレを連れて行くんだろう
わからないけど、このまま時を過ごすのも悪くはない
その時が来るまでは