レオンはいつもキャンディを口にくわえている
それはオレがこの船に誘った頃からだ
きっとレオンはキャンディが相当好きなんだろうなって思っていた
それは、レオンがキャンディをくわえている時は笑っているし、
キャンディにくっついている細い棒がレオンの口になかったことはないから
そんなレオンは昨日で18歳になった
本当ならこの年ぐらいにはもう大人の扱いをしなくてはいけないんだろうななんて
思っていたんだ
オレもそんなこと言えるほど大人なわけではないけど、
そういう扱いをすることが彼をさらに大人への道へと歩かせるのだ
「レオン、そのキャンディも卒業しろよ」
カレツはレオンにバカにしたようにそう言うのはいつものことだった
レオンとカレツがすれ違うだけで、カレツはレオンのことをそんな風に言っていた
しかし、レオンはただただ笑うだけだった
そんなカレツに言い返したり、反論することなど一切なかった
「おい、レオン、お前悔しくないのか?
毎回毎回ああいう風にカレツに言われて」
オレは操縦室でレオンと二人っきりになった時に聞いた
そして、レオンはいつものように笑ってこう言った
「僕はね、雨になりたいんだ
雨は人を悲しくさせてしまうけど、もし、そんな雨がキャンディみたいに
甘かったらさ、きっとね、みんなを幸せにできるって思うんだ
だから、僕自身、心も体も甘くなりたい
この甘い味覚は決して人を幸せにできると思うんだ」
レオンはそういってオレに棒付きキャンディをくれた
レオンは今、誰よりも優しくなろうとしている
空をも包む雲に、大地へ万人に降り注ぐ雨になろうとしている
こんなことを聞いたらカレツもきっとキャンディが好きになるかもしれないな
だってさ、オレはもうすでにキャンディに夢中なんだから