もうすぐ新しい紙幣が出る。その人物像として、千円札には北里柴三郎が用いられています。医学者としては、現行の千円の野口英世に次いで2番目ですが、科学者としての評価は北里柴三郎の方が高いと思います。ただ、人気やアメリカでのフィーバーぶりは、野口英世は大谷翔平レベルだったかも知れません。野口は当時のロックフェラー大学の看板教授でした。北里は、野口の推薦状を書くような世代の人で、その当時は一世を風靡した医学の最前線、細菌学で素晴らしい業績を上げ、世界的に有名な学者でした。今でいえば、分子生物学の最先端の手法を使って再生医療をやっている感じでしょうか。僕も、父親が医者だったので子供を医者にしたかったのか、子供の頃、北里や野口の子供用の伝記をたくさん与えられたような気がします。素直に読んで医学者になってしまったのですが、親の意図に反することだったなと思います。さて、ドラマには悪役が必要です。ここで悪役は青山胤通、以前出てきた細胞病理学を提唱した大学者ウィルヒョウの研究室に留学していた人ですが、日本ではベルツに学び、日本の医学界の頂点を極めた人です。その権力を持ってして、脚気については、高木兼寛のビタミン説を言下に否定し、細菌学の分野においては北里柴三郎をまず伝染病研究所(港区白銀)から追い出し、東京大学付属医化学研究所にした。さらに北里が北里大学を作ったら、それも邪魔したりするという八面六臂の悪役としての活躍は並のパワーの人間ではできないです。お札ができたらドラマにでもなるかなあ。あと東大医学部と言えば、森鴎外ですよね。森鴎外は、どうも胤通とお友達だったようです。これは息子の於菟が解剖学の教授で、のちに書いています。まあ、文学者だからしょうがないよね。