In the pressure
前回の釣行では、婚姻色のマルタウグイのお顔を拝めたものの、本命のスモールマウスは一匹も釣れずに終えていた為、今回は、スモールマウスバスを釣り上げるべく、早朝よりフィールドへ向かう事に。
選んだポイントは、年に数回程しか行っていないが、多摩川ではメジャーポイントの一つ。常にアングラーが出入りする人気のエリア。
ただポイントに着くとアングラーはまだ一人もおらず、いそいそと準備を開始したが、キャストを開始する頃にはもう別のアングラーが近くに立っていた。どうやらタッチの差だったようだ。
雲一つ無い晴天で、無風。
暖かく春らしい陽気の中、また新たにアングラーが数名到着。
もしかするとここは最近釣れている場所なのかもしれないと、嫌が応にも期待が膨らむ。
暫くすると向こう三人目くらいの方がバスをヒットさせている。心の中で「おめでとう」と思ってはいるものの、後から来た方に先を越されてしまい、サイズは小さそうだったが、ほんの少し凹む。
また少しすると、今度は隣の方がヒットさせている。また先を越された。
30前後だろうか、釣れていない自分には、そのサイズでもかなり羨ましい。
釣れているアングラーの立ち位置が、奥から手間に流れて来た為、次は自分かと期待を持ち、集中力を保つ。
だが、次にヒットさせていたのは自分から一番遠いアングラー、そしてまたその次には隣の方から響くドラグ音。。
もう圧倒的に周りのアングラーに釣り負かされているような状況。
自分以外の皆さんはスピニングタックルの様で、よく見ると、スピニングだけを二本も持ってきてる方もいる。
もしかすると、細いラインで、超フィネスにやって、それでもやっと釣れるのは小バス、実はそんな厳しいコンディションなのかもしれない。
多分誰も相手にはしていないと思うが「そんな釣り方じゃ、ここでは釣れないよ」と、無言で教えられているような、そんな気持ちになる。
さらに自分だけノーバイトな状況が続くと、「おい、なんか一個だけ太い糸ついてる奴があるぞ、俺たちを釣りたいならもっと細い糸でやってくれよな!こんな丸見えのに食いついたら、みんなに一生笑われちまうよ!ワッハッハー!」と、水中では自分の投げたルアーを囲んで魚達が笑っている画までもが、頭に浮かびだす。
プレッシャーにやられはじめている。
今日はデコるかも… と思い始めた矢先、向かい風が吹きはじめ、状況が変わりだす。
ライトリグでは少々投げにくそうな向かい風で、暫くすると風裏に移動されたのだろうか、アングラーの数は半分くらいに減っていて、フッキング後の水飛沫の音も、ドラグ音も、何も聞こえてこなくなった。
風は自分にも多少の影響はあるものの、ヘビキャロの為、それ程ストレスは感じない。風向きを意識したトレースコースに変え、探り続ける。
するとグーっと言うアタリ。そして走りはじめるライン。ラインテンションを保ち、ルアーをモグモグされている感じを確認した後、一気にアワセると、
ノッた!
ロッドを寝かし、曲がるロッドの先ではギュンギュン走る手応え。久しぶりに感じるスモールの引き。
やっと来た!
俊敏な動きに加え、そこそこの重み。先程まで周りで釣れていたサイズとはちょっと違いそう。
素早く寄せてキャッチすると、
そこそこ良型。
ポーズをキメる。
記念撮影を終え、再びキャストすると連続ヒット。
流れは完全に来ている様子。
アワセた瞬間に伝わってきた重みは、先程よりもズッシリとしている。掛けた沖目でジャンプされ、見えた魚体は明らかに50アップ。
テンションはMAXまで急上昇し、これは逃してなるものかとゴリ巻きで寄せ、足元で見た魚体は、やはりかなりデカイ。
貰った!と、ハンドランディングの態勢に移ろうとした瞬間、勢い良く沖に向かって走り出され、耐え凌ごうと、とっさに立ててしまったロッドから、その重みは消えた。
痛恨のラインブレイク。
しっかり疲れさせてから寄せなかった事と、一匹目の後にラインの結び変えをしていなかった事、この二つが原因だろう。
「デカイの釣りたかったら結び変えることや」
下野さんの仰る通りだ… 天を仰ぎ そう思った。
まず無理だろうが、出来ればもう一度今の魚を掛けたい、そして、今の針を外してあげたい。
リグを作り直す手は若干震えながら、そういう思いが込み上げる。
釣り上げた一匹目、しくじった二匹目とも、ボトム付近での横移動中に食って来ている。この日はどうやら止めるとダメらしい。
午後からは予定がある為、残された時間はあとは僅かだが、最後までボトム付近での横移動をやり切ると決め、キャストを再開する。
また早々にバイトしてきたが、乗らず。
そんな事が二、三度続く。バラすと警戒されバタッと一気に釣れなくなるパターンには、どうやら幸いなっていないよう。
ようやくアワセが決まったが、サイズダウン。バス持ち写真は撮らずに、帰って行かれる姿のみ撮影。
水面に浮かぶ桜の花弁と虎柄がなんとも良い感じ。
結局その後、魚のサイズは、
一匹目を超える事無く終了。
複数のアングラーが釣り上げている中で、自分だけが釣れない場面に直面し、きっと焦りからリズムが狂っていたのだろう。
「釣ったら結び変える」
思いもよらぬプレッシャーが、既に習慣付いていたはずの事を、怠らせたのかもしれない。
同じミスはもうしない。
そう心に決めた多摩川釣行となった。
In the pressure
完