認知症の妻が新宿で迷子に① (迷子編)

 

妻が女子会に誘われた。

認知症の症状が進む妻は迷ったが、可能なら行きたいというので、移動については僕が同行することにした。見当識障害(時間と場所の認識に弱い)の進む妻が、一人で電車に乗って移動することは、十中八九十迷子になるから。

 

毎日270万人が電車を利用する新宿駅界隈で、迷える子羊を見つけるのは、ラクダが針の穴を通ることより難しい。

 

 

 

女子会は、新宿の京王百貨店の傍の日本料理店でランチ、その後のことは決まってないが、近くのカフェでお茶して解散だろうと、妻は言う。

 

当日、僕は妻に同行して、早めに電車に乗って新宿のその日本料理店へ一緒に行った。お店に入り予約を確認して、往路任務終了。

 

ランチの後のお茶が終わって女子会解散になったら、妻から僕の携帯に連絡を入れて、僕がそのカフェへ迎えに行くことにした。あとは一緒に家に帰る段取りだ。

 

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僕は、近くの町中華でニラレバ炒め定食を食べて(美味しかった)、久しぶりの新宿を少しぶらぶらして、ケンタッキー新宿西口店へ入った。

 

 

店内に入ると、正面に店員さんではなくパネルが立っており、立ったままタッチパネルで全て注文~支払いまですることになっていた。僕は額に汗してハンカチで拭って、拭って、アイスコーヒー+フライドチキン一個+フレンチフライ小のセットをなんとか無事注文を終えた。

 

お店でゆっくりゆったりして、妻からの電話を待った。女子会のランチ後のお茶もそろそろ終わる頃だろう。

 

 

ようやく僕の携帯に電話が掛かって来た。

僕「お疲れさま、楽しかった?」

妻「うん、楽しかった」

 

「今どこ?そちらへ迎えに行くよ、お茶したお店を教えて」

「ん~ん、今、駅の入り口付近だと思う」

 

僕はドキッとした。

お茶が終わったら、終わった場所から動かないようにと、何度も何度も言ったじゃないか・・・。既にどこにいるのか分からなくなっているのかも。。

 

「カフェにいたのじゃないの?」

「ん、お茶終わってね、皆で少し歩いてね、駅で解散になった」

 

「そっか、、駅のどこら辺にいる?」

「ん~ん、駅だね、駅、ちょっと調べて電話するね」

 

「え? じゃあ、まぁ、電話、待ってる」

 

ここから深くて広い迷路へ入って行くのでした。

 

続きます。