9. 石取りの「大きさ」

 石を取ると取り跡が地になり取った石(ハマ)は相手の地を埋められますので、大きさとして取った石の二倍にカウントするのは、日本の碁の概念です。しかし、中国式の計算ではハマはすぐ相手の碁笥に戻しますので二倍にカウントすることはありません。その代わりに最後に盤上に残った石を数えますので計算的には同じになります。言い換えると、盤上から消えた捕虜(石)を数えるか、生き残りの兵(石)を数えるかの違いで結果は同じになる理屈です。ただ、感覚的には石取りを二倍に数える習慣には大きく影響しそうです。二倍に数えるのは出入りですから実質は半分にしかならないのです。石取りは大きく思えますが、手間がかかる割りには小さく、取るならば先手で取るとか、戦いのついでに捥ぎ取るとかなるべく手間を掛けないで取る工夫が必要です。

 結論としては、石取りは見掛けより小さく、なるべく相手の財産(石)を取りたいなどと思わない方が無難です。周到な準備もしないで取りに行くと「取ろう取ろうは取られの元」と自分の方が危険に晒されます。取るぞ殺すぞと脅して儲けるのは良いとして命まで頂くのはやり過ぎになります。こちらの命が危険にならない程度のところで一旦矛を収めて、改めて準備が整ったら戦闘を再開するなど柔軟な戦い方が勧められます。石は取るより与える方が儲かると考えられると棋力が上がります。