生徒さんの碁は、量(地の多い少ない)に関しては必要以上に関心を持ちますが、

       質(コスト)に関しては、ほとんど無視します。普段でも量より質と言われますが、

       碁も例外ではありません。もう少し、碁を量より質中心に考えて見るべきです。

1. 碁における量とは?

   量に関しては、改めて説明する必要はないかと思いますが、碁は最終的には地(=量)の多寡で勝負を決めます。この地は、お互いの石で囲われたゾーンとアゲハマ(取った石→敵地を埋める)に左右されます。石を取った跡地の多くは地になりますから、石を取るとほぼ二倍にカウントされるのも確かです。

   多くの碁打ちは、なるべく自分の地は増やしても減らさせまいと頑張り、相手の地は増やさせまいと減らす努力をします。そして相手の石は取れるだけ取ろうとし、自分の石は極力取らせない、これ(地の増減交渉=量)が、碁の基本姿勢になっております。

   この考え方が間違っているわけではありませんが、大事な要素がひとつ抜けているのです。それは、石取りや地を確保したり減らす行為に使われるコスト(手間=手数)が考慮されていないことです。要した手数を分母に、量を割って比較しなければならないのです。

   例えば、2目の地(最低眼形)を確保するのに10ケの石を使うのと、10目の地を2ケの石で造った場合を比較すると、1ケ当たりの効率は25倍の差になります。量ばかり気にしてコスト(質)を無視するのはナンセンス(片手落ち)と言えます。

   量は、地だけのことであり、単に量だけの増減を気にするのはプロセスを無視しかねません。石を攻められると最低眼形=2目の地を造るのに沢山の石を使わさせられます。碁は効率の悪い石を沢山使った方が勝てない道理なのです。

2. 碁における質とは?

   碁で質と言う言葉は、さほど使いません。最高の誉め言葉として、「この碁は質が高い」などと言うことはありますが、単独で「質」を云々するのはあまり眼にしません。しかし、石の効率(一手当たりの成果=質)には、ものすごく神経を使いますし、碁は石の効率争いであることも間違いありません。

   碁の勝負として、量の確保競争に負けない為には、如何に多くの量を確保するかに知恵を使うわけですが、当然ながら地を囲うにも敵の石を取るにも石を使わねばなりません。石を使うのに料金は取られませんから、打つのはタダなのも間違いありませんが、石は交互に打つルールから、お互いに(プロも高段者も初級者も)同じ数しか使えないのです。

   「質=石の効率」と言うことは、同じ石数なら如何に量を多く確保するか、同じ量なら如何に少ない石数で済ますか、相手には如何に無駄になる様な処に石を使わせるか、相手が置いた石は如何に働かない様にさせるか、こんな工夫を競い合うのが碁の仕組みとも言えます。それが質の競争であり、最終的に量を確保する基本手段でもあります。

   碁の質は石の効率と理解して構いません。残念ながら、量だけを追い求めますと、益々質を低下させる傾向が強く、一手(石1ケ)でも無駄にさせない、しっかり働かせるぞと意識することで、碁の品質向上が図られます。