大名家の将軍よりの一字拝領にまつわる記録を読んでいて感じたこと。

 

1,この儀礼は、将軍の御前で元服し、一字をもらい、併せて、松平姓や初官位をもらったりする。その前後に、自分の家にて前髪をとって。その意味で、この儀礼は人生儀礼なわけですね、大名にとって。

2,ところで、この儀式は、それだけでは終わらず、一字や官位をもらった後には、将軍との盃事と刀の拝領があります。 ともに、大雑把にいえば主従関係を再確認する、というか服属儀礼ですね。大名が将軍の御前に出るときは、刀を外す点もミソ。これは将軍への服従を示す行為であるんでしょう。当然、のち将軍から刀を拝領する行為にめ関わるわけです。

 

3,一字拝領できる家って御三家とか国持大名の中での限られた家とか、本当に限定されておりますから、拝領自体がまさに、特別な将軍よりの恩恵なのですが、もらうからには、服従儀礼に参加しなくてはいけない、という仕組みになっているのも、この儀礼の重要なポイントでしょうか。

 

4,ということで、繰り返しになりますが、この儀礼は、幕藩関係の中での、大名の最重要な人生儀礼であることはいうまでもありません。それとともに、 武家官位制話しの中で考えてみるのも、面白いのかもしれません。

 

5,大名が人生の中で、幾度か経験する官位官職授与の中でも、将軍の御前にて、臣従儀礼を伴う形で拝領するのはこの時だけではないでしょうか(僕が知らないだけかもしれませんが)。 その意味で、極官を獲得することとは別な意義を見つけることもできるのではないでしょうか。