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日経ビジネスの特集記事(109)
日野原・稲盛 魂の提言
日本の医療を救え
2015.06.01

今週の特集記事のテーマは
「日本を、長寿を悲しむ国にしてはいけない」
103歳の現役医師、聖路加国際病院名誉院長の
日野原重明は言う。
「長寿世界一」は日本の誇りである。
だが、老人の医療費負担が現役世代に重くのしかかる。
2000年に約30兆円だった国民医療費は2025年に
50兆円を突破。
支え手の負担が限界を超えれば、社会は長寿を
寿げなくなる。
コスト構造をゼロから見直し日本航空(JAL)を再生した
京セラ名誉会長の稲盛和夫は言う。
「医療に従事するすべての人が経営マインドを持てば、
できることはまだまだある」
医療という「命のインフラ」をどう守るか。
(『日経ビジネス』 2015.06.01 号 P.022)
ということです。
医療問題と高齢化は切っても切れない関係にあります。
日本は「少子高齢化」の先頭を切っています。
生産年齢人口(15~64歳)が減少傾向にあり、
高齢者を支える人たちの負担が重くのしかかってきて
います。
日本がこの問題をどう解決するのか、世界は注目して
います。先進国においては、いずれは日本と同じ道を
たどることが確実視されているからです。

日本の医療を救え
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01

「日経ビジネスDigital」 2015.06.01
第1回は、
「PART1 魂の提言
日野原重明×稲盛和夫」
「PART2 夢の団地と必然の孤独死」
を取り上げました。
第2回は、
「PART3 算術が仁術を超えた日」
を取り上げました。
最終回は、
「PART4 初公開
病院経営力ランキング」
をご紹介します。
今特集のキーワードは次の5つです。

医療の質
利益の還元
仁術に限界
病院経営力
選択と集中
では、本題に入りましょう!
最終回は「初公開 病院経営力ランキング」です。
100位までが掲載されていますが、
この内の上位15病院をご紹介します。
さらに、自治体別ランキングの上位3病院を掲載
します。自治体の規模、病院数に大きな差が
あるためです。
しかも、自治体によって3病院までしか『日経ビジネス』
に取り上げられていない6県(秋田、石川、山梨、
和歌山、鳥取、徳島)があることも、その理由です。
お断りしておきますが、このランキングはあくまで
「経営力」を基準にしたランキングです。
儲かっている病院であるかないかを比較したもの
です。
したがって、名医がいるとか、最先端治療のための
医療機器が設置されているなどを基準に病院を
格付けしたものではありません。
『日経ビジネス』の評価基準を、先にお知らせして
おきましょう。
(P.035)
根拠としたのは、厚生労働省が2003年度から
導入したDPC制度だ。従来の保険制度は、
病院が医療行為を提供するほど儲かる出来高
払い制だったが、診断群分類(DPC)ごとの
定額払い制を徐々に広げてきた。
今やDPC導入病院は1580(2015年4月時点)。
ランキングの対象はDPC準備病院やDPC調査
参加病院を含む全国1798病院。
集客力(退院患者数、退院患者数シェア、
退院患者数増加率)、効率性(患者構成指標、
在院日数指標、病床稼働率、機能評価係数Ⅱ)、
提供体制(医師数、看護師数、専門医割合、
臨床研修人気度)、収益力(DPC入院総収入額、
1日当たり単価、1床当たり収入、1患者当たり
収入)という指標ごとに偏差値を算出。
それらを加重平均して総合得点で比べた。
医師数、看護師数、専門医割合は都道府県が
公表する医療機能情報を使用した。
指標分析は、全国の急性期病院の診療実績を
ウェブで公表している「病院情報局」(運営:ケア
レビュー)が協力した。
PART4 初公開
病院経営力ランキング

まず、上位15病院をご紹介します。


「日経ビジネスDigital」 2015.06.01
表1を見て、気づくことは九州にある病院が15病院中、
4病院と最も多く、しかも10位内に3病院がランクイン
しています。さらに1~2位は熊本県内にある病院です。
これには理由があります。
後ほどお伝えします。
次に、自治体別ランキングを掲載します。
上位3病院を取り上げます。
先に述べましたが、3病院までしか取り上げられていない
県があるからです。
全国47都道府県すべてを取り上げます。
あなたのお住まいの近くにある病院が、3位までにランク
インしているかお確かめください。

自治体 順位 略称 総病床数 総合得点
北海道 20 小笠原クリニック札幌病院 80 60.97
21 札幌北楡病院 231 60.93
28 札幌白石記念病院 103 60.20
青森県 49 八戸市立市民病院 608 59.37
121 青森県立中央病院 695 56.99
293 弘前大学医学部附属病院 644 54.94
岩手県 39 岩手県立中部病院 434 59.75
59 岩手県立中央病院 685 59.02
120 岩手県立胆沢病院 346 57.04
宮城県 4 石巻赤十字病院 452 62.35
16 大崎市民病院 456 61.21
114 仙台厚生病院 409 57.21
秋田県 397 秋田赤十字病院 486 53.66
485 秋田厚生医療センター 479 52.86
563 大曲厚生医療センター 437 52.15
山形県 57 日本海総合病院 646 59.06
223 山形県立中央病院 645 55.64
402 公立置賜総合病院 520 53.60
福島県 311 福島県立医科大学
会津医療センター附属病院 226 54.67
319 総合南東北病院 461 54.59
332 福島県立医科大学附属病院 778 54.40
茨城県 82 聖麗メモリアル病院 72 58.10
149 総合病院土浦協同病院 900 56.44
189 日立総合病院 543 55.96
栃木県 40 自治医科大学附属病院 1132 59.74
104 栃木県済生会
済生会宇都宮病院 644 57.57
107 足利赤十字病院 555 57.48
群馬県 41 沼田脳神経外科循環器科病院 84 59.71
66 太田記念病院 400 58.69
74 伊勢崎市民病院 504 58.50
埼玉県 23 埼玉医科大学国際医療
センター 700 60.62
60 自治医科大学附属さいたま
医療センター 608 58.96
111 埼玉医科大学 総合医療
センター 991 57.40
千葉県 10 船橋整形外科病院 70 61.73
19 東京ベイ・浦安市川
医療センター 344 61.04
36 総合病院 国保旭中央病院 989 59.91
東京都 5 東京都立多摩総合医療
センター 789 62.03
8 イムス葛飾ハートセンター 50 61.82
18 武蔵野赤十字病院 611 61.07
神奈川県 11 湘南鎌倉総合病院 574 61.72
14 済生会 横浜市東部病院 560 61.28
26 東海大学医学部付属病院 804 60.33
新潟県 91 新潟市民病院 660 57.82
156 新潟県立新発田病院 478 56.36
263 長岡赤十字病院 729 55.21
富山県 71 富山県立中央病院 733 58.59
418 富山赤十字病院 435 53.50
463 富山市立 富山市民病院 595 53.12
石川県 340 金沢脳神経外科病院 220 54.30
361 石川県立中央病院 662 53.97
489 国民健康保険 小松市民病院 344 52.82
福井県 333 福井県立病院 961 54.40
428 福井県済生会病院 460 53.47
490 福井大学医学部附属病院 600 52.81
山梨県 174 山梨県立中央病院 651 56.10
441 笛吹中央病院 150 53.34
530 山梨大学医学部附属病院 606 52.40
長野県 30 一之瀬脳神経外科病院 50 60.02
51 長野赤十字病院 700 59.28
58 長野県厚生連 佐久総合病院 801 59.05
岐阜県 115 岐阜県立多治見病院 575 57.15
215 岐阜市民病院 609 55.71
269 大垣市民病院 888 55.11
静岡県 22 中東遠総合医療センター 500 60.83
53 静岡県立静岡がんセンター 589 59.20
72 静岡県立総合病院 720 58.53
愛知県 15 愛知県厚生連 安城更生病院 735 61.25
34 一宮市立市民病院 584 59.94
35 豊橋市民病院 820 59.92
三重県 43 伊勢赤十字病院 655 59.70
175 市立四日市病院 568 56.09
344 三重県立総合医療センター 443 54.21
滋賀県 129 済生会滋賀県病院 393 56.89
173 滋賀医科大学医学部附属病院 614 56.12
217 近江八幡市立総合医療
センター 407 55.70
京都府 12 洛和会丸太町病院 150 61.65
92 新京都南病院 102 57.82
122 宇治徳洲会病院 400 56.97
大阪府 56 関西医科大学附属枚方病院 750 59.10
78 国立循環器病研究センター 612 58.40
93 医誠会病院 327 57.75
兵庫県 3 神戸市立医療センター
中央市民病院 700 62.88
126 兵庫県立淡路医療センター 441 56.93
142 兵庫県立尼崎病院 500 56.55
奈良県 105 天理よろづ相談所病院 815 57.52
186 奈良県立医科大学附属病院 978 55.98
224 奈良県総合医療センター 430 55.64
和歌山県 37 和歌山県立医科大学附属病院 800 59.90
55 日本赤十字社 和歌山医療
センター 873 59.12
462 紀南病院 356 53.14
鳥取県 188 鳥取県立中央病院 431 55.97
266 鳥取大学医学部附属病院 697 55.17
435 山陰労災病院 383 53.40
島根県 196 島根大学医学部附属病院 600 55.89
214 島根県立中央病院 679 55.73
409 松江赤十字病院 645 53.57
岡山県 17 倉敷中央病院 1161 61.21
80 岡山大学病院 865 58.18
134 岡山医療センター 609 56.73
広島県 110 呉医療センター 630 57.42
132 広島市立広島市民病院 743 56.81
139 福山医療センター 410 56.63
山口県 124 山口県済生会下関総合病院 373 56.96
278 徳山中央病院 519 55.05
360 岩国医療センター 530 53.98
徳島県 9 徳島赤十字病院 405 61.79
38 徳島県立中央病院 460 59.86
452 徳島大学病院 696 53.26
香川県 128 香川労災病院 404 56.90
238 三豊総合病院 482 55.49
296 香川県立中央病院 531 54.84
愛媛県 119 愛媛県立中央病院 827 57.04
182 済生会松山病院 170 56.03
242 市立宇和島病院 435 55.47
高知県 64 高知医療センター 649 58.80
226 近森病院 512 55.63
383 高知赤十字病院 468 53.77
福岡県 13 福岡新水巻病院 212 61.60
25 飯塚病院 1116 60.36
27 戸畑共立病院 218 60.26
佐賀県 73 佐賀県医療センター好生館 450 58.52
145 佐賀大学医学部附属病院 604 56.49
355 新武雄病院 135 54.04
長崎県 31 長崎大学病院 862 59.97
103 長崎医療センター 643 57.62
201 佐世保市立総合病院 594 55.85
熊本県 1 済生会熊本病院 400 65.46
2 熊本医療センター 550 62.90
7 熊本赤十字病院 490 61.90
大分県 113 河野脳神経外科病院 40 57.29
248 大分県立病院 578 55.39
283 帰巖会 みえ病院 70 55.01
宮崎県 148 宮崎大学医学部附属病院 632 56.46
273 宮崎善仁会病院 106 55.07
481 都城市郡医師会病院 172 52.88
鹿児島県 42 厚地脳神経外科病院 60 59.70
187 徳田脳神経外科病院 70 55.97
253 鹿児島逓信病院 50 55.32
沖縄県 6 沖縄県立中部病院 550 61.95
29 中部徳洲会病院 331 60.15
50 敬愛会中頭病院 336 59.32
注:2014年9月に厚生労働省が公表したDPCデータおよび
「医療機能情報」の公表データを基に作成
『日経ビジネス』2015.06.01 号 PP.036-039
病院こそ「選択と集中」
次に2つの病院をご紹介します。
総合ランキング1位と3位です。

熊本県には1位と2位があります。
驚異的なことです。
その明確な理由があります。
競争と、診療科のすみ分けが相乗効果を
生んでいます。
熊本の基幹病院が地域・診療機能をすみ分け、
全国のモデルとなっています。
(P.040)
済生会熊本病院(熊本市南区、400床)は、
医療界では著名な病院だ。
1995年に移転したのを機に、診療科を絞り
込んで高度・専門医療と緊急性の高い
重症患者の救命・救急に対応できる特化型
の病院へと生まれ変わった。
1つの病院であらゆる医療ニーズに応える
「総合病院」をやめたことで、大繁盛の人気
病院へと変貌を遂げた。
経営力を端的に示すのは入院患者の平均
在院日数の短さだ。
2014年度実績で9.9日と全国屈指の短さ。
一方、病床利用率は96.0%と、年間を通じて
ほぼ満室状態をキープしている。
現在の保険制度では入院日数が短いほど
診療報酬が高く設定されている。
つまり、済生会熊本病院では売り場(ベッド)に
優良顧客(単価の高い患者)が殺到している
状態を維持しているのだ。
病院の病床の利用率は、ホテルの部屋の利用率
と同様なもの、と考えています。
ホテル業界でいう空室率は、病院の病床率に相当
すると考えられる理由は、1日使われなければ、
その分は永遠に戻ってこないからです。
後で補充することはできないのです。
その点で、「病床利用率は96.0%」というのは、
驚異的な数字だ、と思います。
図1をご覧になるとお分かりになると思いますが、
他の地域との大きな違いがあります。
熊本を代表する病院が集中しています。
しかも、各病院の強みに特化し、すみ分けが
できているのです。
(P.040)
人口約70万人の熊本市は、全国でも有数の
病院激戦区として知られる。
市内中心部には同院を含め、6つの基幹病院
があり、ほかにも大小様々な規模の病院が
乱立する。
そんな中、「何もかもやろうとしても勝算は立たない」
(副島秀久院長)ことが、機能転換の発想につながった。
特化型の病院に切り替えるため、
「疾患・臓器別センター制」を導入した。
実は、済生会熊本病院の機能転換が、地域の医療
提供体制の地殻変動をもたらした。
下図のように市内6つの基幹病院ごとに強みとする
領域をすみ分け、地域全体で分業する体制を作り上げた。
これは地域連携の成功例として、医療界では「熊本方式」
と呼ばれている。
すみ分けが成功しているため、今回のランキングで全国
トップ10に熊本の病院が3つも入った。


・熊本市内の基幹病院と“看板”診療科・得意とする診療分野
「日経ビジネスDigital」 2015.06.01

次にご紹介する病院は、建物の老朽化に伴い、
移転しただけでなく、旧病院と比べてベッド数を
約130床も減らしながら収益力を向上させて
います。
(P.041)
自治体が運営する公立病院は経営に対する
意識が低いのが「通説」だが、神戸市立医療
センター中央市民病院(神戸市中央区、700床)
は該当しない。
同院は神戸市全域の基幹病院・救命救急センター
として24時間365日の救急医療を提供するとともに、
高度医療・急性期医療を重点的に担い、地域医療
の中心的役割を果たしている。
建物の老朽化に伴い、2011年7月にポートアイランド
に移転。
その際、市の方針で、旧病院と比べてベッド数を
130床も減らした。
ハード面では“稼ぎ頭”を伸ばす戦略を取った。
全体で病床を減らしつつ、入院単価の高い救急専用
病床と差額ベッド代が徴収できる有償個室は、
旧病院よりも倍近くに増やした。
また、手術数の増加は経営収入の安定化につながるため、
手術室を12室から18室に増設。外来化学療法センターの
病床も、16床から33床に増やした。
同病院は、医療関係者を増やし、雇用問題にも一石を
投じています。
(P.041)
病床回転率が徐々に高まり、手術数も増えていくと、
現場はより忙しくなる。そこで、旧病院に比べて
これまでに医師は50人、看護師は100人ほど増員した。
公立病院の9割が赤字に苦しむ中、経営が健全ならば
必要な人員を確保できることを示している。


「日経ビジネスDigital」 2015.06.01
病床を減らしても収益力を向上させるために、
「入院単価の高い救急専用病床と差額ベッド代が
徴収できる有償個室は、旧病院よりも倍近くに
増やした」(P.041)
ことは、投資におけるポートフォリオの組み換えに
相当することで、病院経営に「経営戦略」を取り
入れたことが奏功した、と言えます。
今後、病院経営は一層厳しくなってきます。
厚生労働省は医療費の削減をさらに進めるため、
DPC(診断群分類)を導入し、病院経営を「ガラス張り」
にしようとしています。
赤字を垂れ流している病院は潰すつもりでいます。
(P.041)
「薬漬け」や「検査漬け」に代表されるように
従来の病院は、医療を提供するほど儲かった。
厚生労働省は2003年、診療内容を標準化して
ムリ・ムダ・ムラをなくすDPC(診断群分類)ごと
の包括支払い制度を導入した。
DPCデータを使えば、「どんな患者に」「いつ」
「何を行い」「どのような結果になったのか」が分かる。
また各病院が同一のフォーマットでデータを提出
しているため、簡単に病院が比べられる。
一方、すべての患者のレセプト(診療報酬明細書)
の情報を集めたナショナルデータベースの仕組み
が完成したことから、今後はこれを用いて、診療行為
や医療費についての評価・分析がさらに充実する見込みだ。
つまりDPCデータとレセプトデータを組み合わせれば、
医療の中身は“丸裸”となり、病院の経営実態もすべて
ガラス張りとなる。そんな未来が間近に迫っているのだ。
将来の医療需要を推計した上で、地域の医療提供の
実態を踏まえながら、必要病床数を定める。
データを基に病院・病床の大胆なリストラ策が断行される
可能性もあり、医療ニーズに応えられない病院は早晩、
淘汰されるかもしれない。

病院の収益力の差が、病院の優劣を決める

昨日まで、平常通り診療が行われていた病院が、
消滅したらどうしますか?
これからは、そんな現実を目の当たりにすること
になるかもしれません。
その一方で、評判が評判を呼び、患者を集め、
収益力を向上させ、経験値を蓄積させるという、
好循環を生み出す病院もあります。
病院も普通の企業と何ら違ったことはありません。
利益を出し、キャッシュを生み出すことに注力
しなければ潰れるのです。
黒字倒産はありますが、赤字でもキャッシュが
潤沢にあれば潰れません。
今特集のキーワードを確認しておきましょう。

医療の質
利益の還元
仁術に限界
病院経営力
選択と集中
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