イオン 挫折の核心 (日経ビジネスオンラインから)<1> | 藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

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イオン 挫折の核心
(日経ビジネスオンラインから)<1>



『日経ビジネス』は 2015.04.27・05.04 合併号
でしたので、今週号は休刊となりました。


そこで、日経ビジネスオンラインから私が興味を
持った記事をご紹介し、自分の考えを自分の言葉
でお伝えします。



私のブログ 日経ビジネスの特集記事 同様に、
記事の引用と、私個人の考えを明確に分けて、
お伝えしていきます。



尚、イオンに関する日経ビジネスの特集記事は、
下記のページをご覧ください。

日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(1)



日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(2)



日経ビジネスの特集記事(105)
挫折の核心 イオン セブンも怯えるスーパーの終焉(3)





これからお伝えする内容は、『日経ビジネス』
2015.04.27・05.04 合併号に、当時掲載でき
なかった記事の概要です。






 「トップバリュ、安さ一辺倒から脱却する」
イオンの柴田英二・執行役が語る、
商品政策180度転換(前編)
 

の前半


この記事を読んで驚きを禁じえませんでした。


『日経ビジネス』取材班のインタビューに
応じた、イオン商品担当執行役の柴田英二氏が、
ここまで公にしてしまっても良いのだろうか、
という感想を抱いたからです。


現状の問題や今後の戦略を明らかにした
からです。


別の言い方をすれば、良いにつけ悪いにつけ、
イオンが今までの戦略を「180度転換」しなければ、
生き残ることさせ危ぶまれる、とトップが実感した
からだろう、と推測します。


では、本題に入ります。




インタビューですので、柴田氏が語る内容を
中心にお伝えしていきます。





 トップバリュについてのお客さまの評価は、

 価格軸に振れています。

 「安い」ということがメッセージとして

 あまりにも強く伝わったがゆえに、

 安さの評価はあるけれど、安さと共に我々が

 訴求しようとした価格以外の価値について、

 十分に伝えられていなかったと反省をして

 います。


 イオンの一貫した主張としては、

 もちろん価格も非常に重要な商品の価値の

 1つだと思っています。

 「良いものだから高くなってもいい」と

 妥協をするつもりはありません。


 ただ、それが逆に安いことだけにこだわっ

 ていると伝わっているなら、その誤解は

 解かなければならないでしょう。

 事実、従業員にも、我々が安さにだけに

 こだわっているという、エラーメッセージ

 として伝わっていた可能性があります。

 

      日経ビジネスオンライン から




イオンでグループの商品戦略を担当する柴田英二執行役




つまり、価格と価値という2つの軸がありますが、
安さだけで売っていこうとしたところに根本的な
原因があったという認識です。


イオン自ら価格競争に参加してしまったという
反省があります。価値を訴求できなかったのは、
お客様だけではなく、社員に対しても同様だった
ということです。


昔、日本製品は「安かろう悪かろう」と言われた
ものです。品質が良ければ、その品質に見合う
価格設定が必要です。 


今後は、スーパーの特徴の一つでもあった、
「薄利多売」ではどこもやっていけなくなります。


現実的な問題として、会社が儲からなければ
社員に給与を払うことさえ、ままならなくなります。



最近、「トップバリュセレクト」の1商品として、
ギリシャヨーグルトを発売したそうです。







 例えば、先日発売したトップバリュセレクトの

 ギリシャヨーグルトは、プレーンタイプで脂肪分

 ゼロ。こうしたギリシャヨーグルトは日本国内

 でも初めてです。我々の調査によると、

 日本国内で、自分でお金を払ってギリシャヨーグルト

 を食べたことがある人は8%くらいしかいません。


 グループ内の食品スーパーや総合スーパーの

 店長には、発売前にギリシャヨーグルトを食べる

 という体験をしてもらいました。食品売り場の

 責任者や発注実務者にも、トップバリュセレクト

 のギリシャヨーグルトを食べてもらっています。


 ギリシャヨーグルトとは何か。もしくはトップ

 バリュセレクトというブランドとは何か。

 こういうことを伝えたかった。トップバリュの

 良さを従業員に伝えることができたから、

 初日で11万個を販売することができたのだと

 思います。 


 同じように、今まで開発した商品でもその新しい

 価値を伝えていくこと。我々は、それを伝える

 努力を怠ってきたことを、本当に反省しています。

 そのため、まずは従業員に伝えていく。

 これまでは、開発の経緯を文章にして、商品部が

 売り場などの担当者に説明をすれば、その価値は

 伝わると思っていました。

 けれど、それでは全く伝わらなかった。

 一番反省しているのは、この部分です。

 

      日経ビジネスオンライン から





商品の良さや価値を伝えるには、現場で販売に
従事している人たち、スーパーの場合には
パート社員が主体となると思いますが、
食品を試食して味を確かめ、衣料品を試着して、
着心地を確かめることで、本当の良さを知れば、
お客様に強く訴求することが可能です。


こうした「当たり前のこと」をしてこなかった
ツケが回ってきたとも言えます。


社員を「お客様」にできなければ、自社商品を
自信を持って売っていくことはできません。


ギリシャヨーグルトに限らず、自社商品を試食
したことがなければ、お客様から「どんな味なの?」
と聞かれて、その場で「試食してみてください」
と言うだけでは説得力は乏しいでしょう。


現場の従業員が実食していれば、試食した
お客様をその場で説得することはそう難しいこと
ではない、と思います。自分が体験した実感を
率直に伝えれは良いからです。


「トップバリュの良さを従業員に伝えることが
できたから、初日で11万個を販売することが
できたのだと思います」

という柴田氏の言葉に現れています。






 今すべきことは、価値をちゃんと伝えること。

 同時に、つまらないトップバリュではなく、

 ワクワク・ドキドキするようなトップバリュ

 を作ることです。

 

      日経ビジネスオンライン から




私はこう考えています。
現在、市場に出回っている多くの商品に、
「ワクワク・ドキドキ」感が乏しいために、
お客様からそっぽを向かれ、売れないという
現象が起きているのです。


以前と比べ、ソニー製品に魅力がなくなった、
と感じられるのは、まさに「ワクワク・ドキドキ」
感がなくなったからです。


ソニーに限りません。日本製品全般に言えること
かもしれません。もちろん、その背景には、
お客様の価値観が「多様化」(ダイバーシティー)
したという、大きな変化があったことは間違い
ありません。


ありふれた商品では見向きもされないのです。




「トップバリュ」は今までどのようにして開発して
きたのか、柴田氏は次のように語っています。







 現在のトップバリュの全体の約9割については、

 主にNB(ナショナルブランド)商品をベンチ

 マーク(比較対象)として開発してきました。


 既存のトップバリュは、そのほとんどが、

 既存カテゴリーで顕在化されたニーズに対応

 したものでした。この第1象限に入るのが、

 トップバリュ全体の約9割です。


 この約9割を占める部分について面白くない

 商品があるなら、リニューアルして面白く

 しないといけませんし、その価値を評価して

 もらっていないものについては、大胆にカット

 していかないといけません。

 加えて、ベンチマークにしたNB商品よりも、

 価格を含めた価値があるものについては、

 もう1度伝え方を見直す努力をします。

 

      日経ビジネスオンライン から



「トップバリュ」はPB(プライベートブランド)です。
「主にNB(ナショナルブランド)商品をベンチマーク
(比較対象)として開発してきました」、と柴田氏は
語っています。


問題は、NBも今までと同じ品質を維持していたわけ
ではなく、改良が続けられてきていたはずです。
味も成分の配合も少しずつ変えてきていたはずです。
ベンチマークを継続的に行なってきていれば、それで
良いわけではありません。


セブン&アイ・ホールディングスのPB「セブンプレミアム」
のカップ麺を例に挙げれば、麺、スープ、具を
それぞれ異なるメーカーに作らせている商品が
あります。


メーカーからすれば非常に屈辱的な扱いを受けて
いるわけです。どのメーカーでも商品をすべて自社
の材料で出したいわけですが、力関係でままなり
ません。


セブン・イレブンの棚からNBまで排除されかねない
からです。


セブンはNBよりもPBを高く売っているのです。
「PBはNBより安いもの」という固定概念を覆して
います。高付加価値を提供していると自負している
からこそできることです。


最高の素材を結集して最高の商品づくりをする
ことで、「価値」をお客様に提供しているのです。


だからこそ、PB「セブンプレミアム」は NB より
高くても売れるのです。





「トップバリュセレクト」のもう一つの商品の
例を柴田氏が紹介しています。


「タスマニアビーフ」を使ったハンバーグだそう
です。






 2014年度のトップバリュのヒット商品の1つに、

 タスマニアビーフを使ったハンバーグがあります。

 トップバリュセレクトとして発売したこの商品は、

 1食398円もします。一方、通常のトップバリュの

 加工ハンバーグは1食78円。


 レストランで食べるハンバーグを家庭で手軽に

 食べられる、というコンセプトで作りました。

 専門店のレベルの商品が、家庭で食べられる

 わけです。


 レストランの味が再現できているのであれば

 決して高くはない。そういう意味で、品質にも

 価格にもこだわった商品です。

 

      日経ビジネスオンライン から




「品質=価値」を高めた商品を価格に反映
させた実例ですね。


イオンは3つの戦略を考えているそうです。
1つ目はビッグデータの活用で、2つ目は
お客様の声の活用、そして3つ目はPB受託
開発会社の存在だそうです。






 イオンだからできるマーケット視点での商品の

 開発に転換していきます。

 大きくは3つの方法があると思っています。

 1つは、どの小売業にもありますが、来店した

 お客さまがどの商品を、どういう関連で購入

 するかという、いわゆる「ビッグデータ」を

 活用するものです。


 2つ目が、ダイレクトなお客さまの声を生かした

 開発です。トップバリュの販売者はイオンです。

 つまりお客さまの商品に関する問い合わせ先は、

 トップバリュのお客さまサービスで一元管理

 されている。トップバリュに対する要望やお叱り、

 お褒めの言葉を一元管理してきたわけです。


 これからは新しい商品を作るという視点で、

 お客さまの声を分類し直そうと思っています。


 3つ目は、我々のPB(プライベートブランド)

 開発受託会社であるデイモン・ワールドワイド

 の存在です。デイモン・ワールドワイドは、

 欧米のPB商品も手がける専業ブローカーです。

 そのため、彼らは米国や欧州の先進的な動向を

 良く知っています。欧米で成功を収める小売業

 の商品戦略も熟知している。そして、彼らだから

 知り得る情報を、日本でダイレクトに受け取れる

 のはイオンだけです。

 

      日経ビジネスオンライン から



柴田氏の話には出てきませんが、エンド
(ゴンドラエンド、陳列棚の端の部分)の
見直しは大切だと思います。



セブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOの
鈴木敏文氏は、12年前に出版した、

『鈴木敏文 商売の創造』
(緒方知行 編 講談社 2003年10月22日
 第1刷発行)

の中で次のように書いています。





 ゴンドラエンドに置くのは、お客様から見て

 魅力ある商品でなければなりません。

 






ところが、イオンの実態はこうでした。




 柴田社長には、忘れられない光景がある。

 昨年、ある店舗を訪れた時のことだ。

 「エンド」と呼ばれる陳列棚の端に、

 トップバリュがうず高く積み上げられていた。

 エンドは、一般的に特売商品や新商品を

 並べる一等地。売り場の鮮度を演出し、

 客の購入意欲を高める重要な場所だ。

 そこに定番商品のトップバリュを置いても、

 客が関心を示すはずがない。

 事実、柴田社長がじっと様子をうかがって

 いても、立ち止まる客は皆無だった。

 

  (挫折の核心 イオン “イオン化”の挫折、
  「解体」で出直し 日経ビジネスDigital から)



 * 柴田社長、昨年5月にイオン九州社長に就任した
   柴田祐司氏





かなり長くなりましたので、
 「トップバリュ、安さ一辺倒から脱却する」
イオンの柴田英二・執行役が語る、
商品政策180度転換(前編)
 

の前半は、ここで終わりとします。


次回は後半をお伝えします。







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