苦境で輝ける人材は
異質と触れ合って育つ
和久井 康明(わくい・やすあき)氏
[クラレ相談役]
思いやりがあり、衆知を結集できる人材なしには
企業は成長できない。私がそう痛感したのは、
ある事業売却がきっかけでした。
「カナダドライ」ブランドのジンジャーエールを、
近畿と四国で販売していましたが、大赤字に
陥っていたのです。
当時、企画部門にいた私が撤退プランを策定
することになりました。なんとか実現可能な計画
を策定して上司に見せると、こう言われました。
「おまえ自身が出向してプランを実行しろ」と。
それからが大変でした。売却計画を知っているのは、
出向先の社長と私のみ。
苦しい局面では、人間は感情を赤裸々に表してきます。
様々な立場の人を説得するのは骨が折れる。
結果として良い相手に売却できましたが、私一人の力
では難しかったでしょう。優秀な人を見つけて巻き込めた
ことが、成功の要因だったと思います。
社内の各部署をローテーションして、多種多様な人と
触れ合う経験こそが、社員を大きく育てるのだと思います。
現時点でもうかっているビジネスが、百年後も安泰なはず
はない。どんな事業でも、技術革新によって陳腐化する
恐れはあるのです。
ポートフォリオを常に組み替えて成長を続けるには、
感情の機微を理解し、思いやりを持つ人材が不可欠
です。
(2015.03.16号から)

クラレ相談役 和久井 康明 氏
「日経ビジネス」 2015.03.16 号 P.001
キーワードは、ポートフォリオの組み換えです。
クラレで思い出すことがあります。
大学卒業後、最初に勤めた会社は、官庁職員の制服など
を納入する繊維事業部と、東電などに資材を納入する
資材事業部、不動産事業部の3部門が主要部門の専門
商社でした。
私は1年目に繊維事業部に配属になりました。
先輩に連れられて、官庁によく出かけたものです。
最高裁判所の用度課にも行きました。
一方、クラレのクラリーノ製のレインコートをヤマハ発動機に
販売することもしていました。当社担当者は「雨合羽」と
よく言っていました。雨合羽はボートに乗る人が波しぶきを
防ぐために不可欠なものだったのです。
35年以上前の話です。
和久井さんは、「カナダドライ」という清涼飲料の
販売会社を売却するためのプランを策定しました。
ところが、上司から「おまえ自身が出向してプランを実行しろ」
と一喝されます。
その瞬間、「なんで私が?」と思ったことでしょう。
昔、カレールーのテレビCMで「あなた作る人、私食べる人」
(順序が逆だったかもしれません)というフレーズが流行り
ました。
今振り返ってみると、これは役割分担ではなく、食べる人の
ご都合主義だったのです。
同様に、プランの策定者と、プランの実行者が別にいること
は先程のテレビCMに似ています。
上司の本意は、プランの策定者が一番状況を把握している
はずなのだから、自ら実践すべきだということだった、
と推測されます。
現在でも、プレゼンだけして自ら実行しないという仕組みが
残っている企業があります。
一方で、プレゼンをして認められると、プレゼンの内容を
実践させるために子会社の社長にするという企業もあります。
若いうちから社内起業家として働くチャンスが得られるのです。
独立のための実地訓練の意味合いもありますし、仮に業績が
思うように上がらず、廃業となっても親会社に戻ることが
できます。少々甘いかもしれませんが。
モノには賞味期限があります。ライフサイクルはどんどん
短縮しています。であるならば、現在、売上げ好調の製品
であっても、その製品を凌駕する新製品が出現したり、
規格やルールが変更されると、とたんに売れなくなってしまう
現象はよくあります。
だからこそ、ポートフォリオの組み換えが必要不可欠なのです。
今回は、上記のような感想を持ちました。
あなたの会社では、プレゼンはプレゼンだけで終わりですか?
それとも、新規事業で起業できる仕組みはありますか?
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