2015.01.26
桐山 一憲(きりやま・かずのり)氏
[米P&Gアジア最高責任者]
グローバルに活躍できる条件というのは、
日本人だろうが外国人だろうが変わりません。
僕はP&Gでいろいろなリーダーを見てきました
が、彼らには共通点があります。まずみんな
情熱がすごいんですよ。
たぶん業界が変わっても、何かにものすごく
エネルギーを注げるというのが活躍するための
第1条件でしょう。あとはやっぱり懐の深さが
必要です。
あと最近特に思うのは、結局相手を信頼し、
仕事を与えていく、権限を委譲していくことが
できないと、なかなかうまくいかないと思います。
重要なのは、人材を育てるためのプロセス、
仕組みだと思います。まずは、採用段階で
ポテンシャルのある人たちを見極めて採用する
ことが大切になります。そのためには、時間を
かけて相手がどういう人なのかを見極めなく
てはなりません。P&Gは、面接官が学生と1対1
でじっくりと話をします。これは私が採用試験を
受けた頃から変わっていません。
個人的には、リーダーを育てるのは投資じゃ
なくて、リーダーの責務であると考えています。
それができないリーダーはこの会社にはいら
ないと言っていいぐらい。P&Gは、「promote
from within」と言い、外資系の大手では珍しく、
学生を採用して、社内でずっとキャリアを積んで
いってもらいます。他社から人を採りません。
リーダーを育てる教育システムもあります。
具体的には各段階で「P&Gカレッジ」というトレー
ニングを受けます。ユニークなのが、カレッジの
講師の大半がP&Gの幹部であることです。
そして3つ目は、「仕事のアサインメントプラン
ニング」といって、入社直後から結構大きな
仕事の責任を与えるということです。
恐らく1年目で日本のほかの会社の5年目ぐらい
の仕事を任されます。
非常に大変ではあるけれど、職務をこなした
暁には、想像以上に力が付きます。
最近、若者を草食系と呼びますが、本当にそう
でしょうか。僕はよく聞くんです。「僕らの世代で
大リーグに行ったやつが何人いる?」「サッカー
でヨーロッパで活躍したやつ、何人いる?」と。
ゼロですよ。
一方で、今グローバルで活躍している人たちが
どれだけいるんだよ、と。スポーツだけじゃなくて
ビジネスの世界でも。実は今の世代の方がグロー
バル化とか、あるいはリージョナル(地域)化に
対応できている人たちがいるんですよ。昔よりも
たくさん。
成長というのは(上がったり下がったりを繰り返す)
Sカーブ。その繰り返しを何年も何十年もやって
企業は繁栄していきます。P&Gは今、成長のS
カーブの一番上のあたりでちょっとスローダウン
して、市場平均レベルになっている。
P&Gはもともとポートフォリオが幅広い会社です。
たくさんのポートフォリオを抱えたままでは、ライ
バルに隙を与えることになります。ぐっと絞っていく
方が、脅威だと思いますし、資源の配分も最適化
されます。売上高は10%程度減るでしょうが、
9兆円のうち1兆円の売り上げをなくしてもいいと
いう覚悟でやるわけです。
日本と、中国と香港、台湾、韓国の購買力が
トップの消費者層というのは、あまり違いは
ないんですよ。
そのため、日本でまず成功させるというのが
アジア展開において、非常に重要になってきます。

米P&Gアジア最高責任者 桐山 一憲 氏
(『日経ビジネス』 2015.01.26号 P.073)
桐山さんのお話しを読んで、驚いたことが3つありました。
1つ目は、今の若者は草食系ではない、という指摘です。
サッカーに限定してお話ししますと、確かに私たちの世代
ではドイツ・ブンデスリーガで、日本人初のプロサッカー
選手になった奥寺康彦さんしかいません。
今は、ドイツやイタリア、イングランドでレギュラーでプレー
している選手たちがたくさんいます。
2つ目は、P&Gは米国の企業でありながら、新卒採用
をずっと続けていることです。内部で育てていく方針です。
極めて珍しいことです。米系企業は積極的に他社から
ヘッドハンティングして中途採用します。即戦力を求め
ているです。
そして、3つ目は、売上高が減っても、「選択と集中」に
徹していこうとする企業の姿勢です。
「9兆円のうち1兆円の売り上げをなくしてもいいという
覚悟でやる」という考え方は、とても信じられないことです。
目先のことよりも、将来を見据えてポートフォリオを変更
していこうとしているのです。
桐山さんは、「日本人初のアジア最高責任者」になられた
ので、さらに上を目指して欲しいと思います。
きっと、ご本人もそのつもりでいる、と想像しています。
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