他人と違うことに全力
海外で精神鍛えよ
盛田 正明(もりた・まさあき)氏
[盛田正明テニス・ファンド会長]
錦織圭の全米オープンはテレビで見ていました。
一番心配していたのはけがです。けがさえしな
ければ世界ランキング5位以内の力はあります。
私はファンドを通じて錦織を支援してきましたが、
彼の活躍はソニー創業者の井深大さんのおかげ
とも言えます。私がソニーに入社したのは創業
5年目の1951年。技術者の私は井深さんに、
「他人がやらないことに全力を注げ」と教え込まれ
ました。
私テニスが大好きでね。テニスで他人がやらない
ことをやりたくなった。ただ、私はもう体が動きま
せん。そこで若い才能を支援することにしたのです。
目標にしたのが、男子テニスで世界トップの選手を
育てること。
日本人は必ずしも技術で世界に劣っているわけ
ではありません。精神力と体力が世界で戦えるよう
に鍛えられていないのです。それなら、12~13歳
の頃から世界一流の舞台に独りで放り出し、外国人
の中で暮らすようにさせれば、その2つを克服できる
と考えました。
子供たちには、毎年非常に高い目標を与え、達成
できなければ日本に帰国させています。
日本でトップ選手だった実績は、世界では何の価値
もない。その厳しさを学んでほしいからです。
私は才能が伸びる環境を用意しますが、実際に
伸びるかどうかは本人に何か光るものがなければ
ダメです。
(錦織は)どんなにつらくても世界トップを目指すこと
に一生懸命でした。
唯一言えることは、海外に住む経験が必ずプラスに
なるということです。つらい目にも遭いながらも、
その環境を楽しめるようになって初めて、世界の
舞台で100%実力を発揮できる。それはビジネスでも
同じでしょう。日本に閉じこもっていてはその経験は
できません。
(2014.10.13号から)
盛田さんは苗字で分かるように、ソニー創業者の
盛田昭夫さんの実弟です。
正明さんは、同じくソニー創業者の井深大さんの
薫陶を受け、「『他人がやらないことに全力を注げ』
と教え込まれた」、と語っています。
さらに、「定年退職後、死ぬまでに何ができるのか、
ものすごく悩みました。その時、ふと思い出したのが、
そんな井深さんの教えでした」とも述懐しています。
テニスファンドというものは、それまで日本にはありま
せんでした。きちんと事業として成り立たせ、資金を
集めるためには「高い目標と実績」が物を言います。
これはまさに、先行投資そのものです。
海の物とも山の物ともつかない原石をいかにして、
磨き上げ、ダイヤモンドに仕上げるかは投資家の
力だけでは不可能です。
原石自体が光り輝こうという強い気持ちを維持し続け、
一所懸命に努力しなければなりません。チャンスを
提供し、支援するのが投資家の務めです。
国内で勝負するだけの内弁慶では、世界に勝てない
ことは日本企業にもそのまま当てはまります。
国内トップシェアをずっと維持し続けていても、
いずれ市場は飽和状態に達し、成長は止まります。
今週の『日経ビジネス』の特集記事で、花王が取り
上げられています。
花王はトイレタリー事業で国内トップシェアをひた走る、
存在です。ところが世界に目を移すと、P&Gや
ユニリーバに大きく水を開けられ、ふと後ろを振り
返ると、ユニ・チャームに株式時価総額で接近され
ているだけでなく、海外事業で先を越されました。
海外売上高比率は開く一方です。
そんな話と重ねあわせて、正明さんの話を読んで
感じました。
ソニーも今、非常にもがき苦しんでいます。
スマートフォン事業のつまづきは大打撃でした。
パソコン事業でも失敗し、ファンドへ売却せざるを
得ませんでした。
本来ならば、iPhoneはソニーが作っていなければ
なりませんでしたし、スマホ生産全体を考えると、
現在のサムスンの姿は、ソニーでなくてはなら
なかったはずです。
そんな思いが去来しました。
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