連載は今回で終了します。
あまり興味が持てませんでしたか?
今までの内容で、疑問に感じたことや、
これは違うのではないかと思われたら、
遠慮なくコメントやメッセージで
お知らせください。
STAP細胞、失墜の連鎖 ⑤ 後塵
(『日経ビジネス』2014.07.28号 P.074 以下同様)
その有無がどうであれ、STAP細胞は
数ある基礎研究の一つ。患者の役に立つ
医療という本来の目的を考えれば、日本の
研究にははるかに多くの課題が存在する。
(上掲誌 P.074)
「理研の倫理観にもう耐えられない」
「まだ始まっていない患者さんの治療
については中止を含めて検討いたします」
――。
小保方の実験参加が決まるのと時期を
合わせて、理研のプロジェクトリーダー、
高橋政代がツイッターに投稿したつぶやき。
直後に発言を撤回したが、iPS細胞に
よる網膜治療でで世界初の臨床研究を
進める高橋の「中止宣言」に、世間は
一時騒然とした。
(上掲誌 P.074)
「あれは、恐らく高橋さんの本音だろう」
細胞分野で国内トップ級のある研究者は
こう推測する。“本音”と言っても、
STAP細胞の不正を巡る理研の対応に
問題を提起した、という高橋の説明を
額面通りに受け取ったわけではない。
「彼女(高橋)の研究は、国の期待を
一身に背負っている。しかも、iPS細胞
由来の網膜を移植したところで、大した
効果が出ない可能性もある。あれだけの
重圧がかかれば、尻込みするのも理解
できる」。研究者の見立てはこうだ。
(上掲誌 P.074)
人工関節を補助する骨や、角膜は早ければ
2008年、中枢神経は2010年から実用化する
――。
2002年春、神戸市内のホテルで開かれた
バイオ産業関連のカンファレンスは熱気に
包まれていた。
(上掲誌 P.074)
あの華々しい「未来予想図」から12年、
現在までに国内で認可された再生医療製品は、
ジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの
培養皮膚と培養軟骨の、2製品にとどまる。
海外では2012年時点で欧州が20製品、韓国が
13製品、米国でも9製品が実用化しているのと
比べると、惨憺たる状況だ。
(上掲誌 P.074)
後塵を拝する背景には、薬事承認に時間の
かかる国の規制、実用化に消極的な大学、
長期的な開発を敬遠する日本企業の体質など、
複合的な要因が絡みあう。iPS細胞の発見で
再生医療では世界のトップに躍り出たはずの
日本が抱える皮肉な現実が、そこにはある。
(上掲誌 P.074)
成果が国内で花開かない問題は、医療業界全体
に共通する。自治医科大学教授(当時)の
間野博行が2007年に発見した非小細胞肺がん
の原因となる融合遺伝子「EML4-ALK」。
論文発表から4年後、阻害薬を真っ先に製品化
したのは米ファイザーだった。日本の市場や
基礎研究に魅力を感じる外資企業は、地方大学
にも足を運び新薬のタネを物色する。
(上掲誌 P.074)
リスクを取らない内向き志向の企業に、「出口」
を叫びながら時間とカネを空費し続ける国。
そのはざまで大きな責任を課せられ、余裕を
失いつつある基礎研究者たち。STAP細胞
の真偽を超えて、我々が憂慮すべき本当の課題
は、ここにこそある。
(敬称略)
<私の感想と考え>
理研のプロジェクトリーダー、高橋政代さんが
登場しています。
この方は、理化学研究所CDB(発生・再生科学
総合研究センター)副センター長、故・笹井芳樹
さんと、論文の共同執筆者です。
その論文は、
「Juthaporn Assawachananont, Michiko Mandaiemail,
Satoshi Okamoto, Chikako Yamada, Mototsugu Eiraku,
Shigenobu Yonemura, Yoshiki Sasai, Masayo Takahashi
(2014-05-06).
Transplantation of Embryonic and Induced Pluripotent
Stem Cell-Derived 3D Retinal Sheets into Retinal
Degenerative Mice”. Stem Cell Reports 2 (5): 662-674.」
(高橋政代 Wikipedia から)
です。
「iPS細胞由来のマウスの網膜の移植」に関する論文です。
高橋政代さんについて。
(高橋政代 Wikipedia から)
高橋 政代(たかはし まさよ、1961年(昭和36年)
6月23日 - )は、日本の医学者、眼科医。
医学博士(京都大学)。
京都大学助教授を経て、現在神戸理化学研究所
網膜再生医療研究開発プロジェクトのプロジェクト
リーダー。
従来、再生不可能と考えられていた網膜再生医療
技術の研究・開発に取り組んでいる。
夫は京都大学iPS細胞研究所教授の高橋淳。
2005年に笹井芳樹との共同研究で、世界で初めて
ES細胞から神経網膜を分化誘導することに成功した。
2014年夏には自己由来のiPS細胞を患者へ移植する
臨床研究を世界で初めて実施する予定であり、
イギリスNature誌が選ぶ「2014年に注目すべき5人」
にも選ばれている。
つまり、高橋さんは笹井さんとも、山中伸弥・
京都大学教授とも関わりがあるということです。
高橋さんが影響を受けた人として、
4人を挙げています。
(高橋政代 Wikipedia から)
キュリー夫人(幼少時の憧れ)
高橋淳(夫、留学にあたって)
笹井芳樹(ES細胞との出会い)
山中伸弥(iPS細胞との出会い)」
STAP細胞の真偽が提起した問題は、
図らずも日本の医療業界を取り巻く深層を
抉りだす結果になりました。
この「事件」が起きなければ、日本の医療に
関する「問題の核心」がどこにあるのか、
一般に知ることはできなかったでしょう。
今後、高橋さんの動向が注目される、
と私は考えています。

STAP細胞についての詳細は、
下記のブログをご覧ください(再掲)。
STAP細胞の作製に関するマスコミの対応について
この一連の騒動により、英科学誌「ネイチャー」
への掲載論文は撤回されました。
私はこのようになる可能性が高くなった時点で、
PDFに保存しました(再掲)。
参考までに下記のPDFをご覧ください。
もちろん、英文ですし専門用語だらけですので、
理解することは極めて難しいことですが、
参考資料として考えていただければ、
よろしいかと思います。
この論文の共同執筆者に東京女子医大の大和雅之
教授の名前があります。さらに2名のバカンティ氏
も掲載されています。
Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells
into pluripotency
記事が面白かったら
ポチッとして下さい。

こちらのブログもご覧ください!
こんなランキング知りたくないですか?
中高年のためのパソコン入門講座(1)
藤巻隆のアーカイブ
私の書棚(読み終わった本の一覧)