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日経ビジネスの特集記事(57)
さらば使い捨て経営
「正社員化」だけでは解決しない
2014.05.19
今週の特集記事のテーマは
限りある人材を“使い捨て”にする経営と決別する。
それが実現できない企業に未来はない
ということです。
前回は、「限定正社員」という言葉から
判断すると、非正規雇用者に労働条件が
改善されたような錯覚を抱かせるが、
現実には問題点があることなどを
ご紹介しました。
今回は、「人財」を中心に据えた経営を
行うには、どうしたら良いか、ケース
スタディを取り上げます。
その前に、社員には「人財」「人材」
「人在」「人罪」の
4種類、さらに付け加えるならば、
「人剤」(私の造語)があります。
言葉遊びではなく、作為的か無作為的かは
別として、企業は4種類ないし5種類に
社員を選別してきたことは事実です。
5つの「ジンザイ」を簡単に説明します。
「人財」は、社員は会社の「財産」と見なされ、
厚遇されます。
「人材」は、可もなく不可もなしの、ごく普通の
社員です。
「人在」は、ただ存在するだけの社員です。
まったく成果を上げることはありません。
「人罪」は、存在そのものが罪に当たる社員です。
会社に多大な損害や迷惑を及ぼしている社員です。
通常は解雇されるはずですが、オーナーや経営者
一族とのつながりがある場合、簡単に解雇される
ことはありません。
会社をじわりじわりと蝕む存在です。
「人剤」は、私の造語ですが、「剤」が示す通り、クスリの
役目をする社員です。
どういうことかといいますと、クスリは本来、毒ですね。
つまり、「毒をもって毒を制す」という存在です。
企業の陰の部分を受け持つ、実行部隊の一員です。
例えば、リストラ対象者をあぶりだすため、社員の
スキャンダルを嗅ぎつけ経営者層に報告する役目も
担っています。必要悪です。
劇薬でもあるので、取り扱いを一步間違えると企業は
傾きます。
では、私はどの「ジンザイ」だったのか、あなたは興味を
お持ちになったでしょうか?
自分では、「人財」だと思っていましたが、会社から
見ると、私は、「人財」を除いた他の4つの「ジンザイ」
のどれかに該当したのです。
異なる会社で、3度も汚いやり方で、リストラされた
のですから、間違いありません。
それ以来、社畜や社奴には二度となりなくない、と心に
誓いました。
私個人のことは、この際どうでもよいことです(苦笑)。
本題に入りましょう!
PART3 今こそ、「人財」経営
さて、「人財」についてですが、イオングループでアルバイト
から正社員になり、今春店長になった女性を取り上げて
います。
イオングループは約37万人が働いていて、その8割以上を
パートやアルバイトが占めているそうです。30万人近くが
非正規雇用者ということになります。
イオングループは、パートやアルバイトのやる気と能力を
最大限に引き出すために、10年かけて正規と非正規の雇用
体系の一本化に取り組んできたそうです。昨日や今日のこと
ではないのですね。
今年(2014年)3月にイオン高萩店(茨城県高萩市)の店長
になった下田かおりさん(35歳)について、日経ビジネスは
どんな点に着目したのか、リポートを見ていくことに
しましょう。
(PP.034-5)
下田さんは2001年、埼玉県の店舗に時給制の
アルバイトとして入社した。大学を中退して
飲食店で“フリーター”として働いていたが、
正社員になる道がなかなか見つからなかった。
そんな時、近所にあったイオンの店舗で求人票
を見つけ、ギフトコーナーで働き始めた。
転機となったのは、2004年にイオンの総合
スーパー部門のイオンリテールが正社員と
非正規の人事制度を統合したこと。2006年に
勤務5年を超えた下田さんも、正社員の登用
試験を受ける資格を得た。当時の店長に
熱心な働きぶりを認められ、「試験を受けて
みたら」と勧められ、筆記や面接に臨んで
合格した。
運命の「出会い」があったのですね。
そして、チャンスをしっかり掴んだということに
なります。
今読んでいる途中の『マキアヴェッリ語録』
(塩野七生 新潮文庫 平成4年11月25日発行)に、
次の一節があります。気づきがあります。
(PP.206-7)
なにかを為したいと思う者は、
まずなによりも先に、準備に専念
することが必要だ。
機会の訪れを待っての準備開始では、
もう遅い。幸運に微笑まれるより前に、
準備は整えておかねばならない。
このことさえ怠りなくやっておけば、
好機が訪れるやただちに、それを
ひっ捕まえてしまうこともできる。
好機というものは、すぐさま捕まえ
ないと、逃げ去ってしまうもの
である。
―― 「戦略論」 ――
イオングループは現在どのような人事制度を
採用しているのか、気にかかりました。
下田さんのケースが例外であってはならない、
と考えたからです。
(P.035)
「雇用を確保するための最後の
“宝の山”がパートだ」。
イオンのグループ人事最高責任者の
石塚幸男・執行役はこう強調する。
「青い鳥症候群」に陥っていたのかも
しれませんね。あるいは「灯台下暗し」
だったのか。
コマツは大型建機メーカーとして世界的に
有名な企業です。
建機に無線で遠隔操作できるシステムを
ビルトインしていて、コマツから海外に
ある建機が稼働しているかどうか確認できる、
というスゴ技が生かされています。
稼働していなければ、現場の工事がはかどっ
ていないことを意味します。そうすると、
建機の代金の返済が滞るおそれがあると判断
できるのです。情報を収集して、対策を講じる
ことができるのです。
そうしたコマツでは、非正規社員を多く雇って
きました。非正規社員の待遇で、他社との違い
は明白です。
(P.036)
企業にとって都合の良い存在だからこそ、
非正規社員に手厚いサポートを用意している。
まず、契約期間の途中解除は絶対にしない。
期間が満了したのに契約更新しない場合、
再就職支援金を払う。職探しのための年休
も付与する。労働者が最も困るのが、再就職
活動中に新たな住居が決まらない場合だ。
こうした人に対しては、寮や社宅の使用延長も
認めている。
これだけ、配慮してくれれば、また機会があれば、
コマツで働きたいと思うことでしょう。
「採用氷河期」が到来 備えはあるか
日経ビジネスは、特集の最後に「『採用氷河期』が
到来備えはあるか」と題して一石を投じています。
長年買い手市場であった採用状況が、確実に売り手
市場に変化してきています。
日経ビジネスは、ドラマ『半沢直樹』のワンシーンで
有名になった言葉(2013年流行語大賞の1つ)を
使って、企業に厳しい意見を突きつけています。
(P.040)
使える正社員だけ厚遇し、いつでも
契約を打ち切れる非正規社員を増や
して人件費を抑制してきた。
そのツケは「超」が付く人手不足が
時代に“倍返し”で払わされることに
なる。
これから十数年先を概観すると、労働力
人口は加速度的に減少していくことが
確実な見通しです。
(P.040)
国立社会保障・人口問題研究所の
「日本の将来推計人口(2012年1月推計)」
によると、日本の労働人口(15歳以上の
人口のうち就業者と完全失業者を合計)
は2013年に6577万人。ピークだった
1977年の6787万人から16年間で210万人
減少した。
厚生労働省の雇用政策研究会の推計
によると、出生率などの条件がこのまま
変わらなければ16年後の2030年には
労働力人口が5683万人になる見通しだ。
2013年からさらに894万人も減る
計算になる。
こうした見通しに、内閣府は解決策を今年3月に
公表したそうです。その資料を読むと可能性は
極めて低い、と言わざるを得ません。
(P.041)
出生率が回復し(2030年に合計特殊
出生率が2.07まで上昇)、女性が
スウェーデン並みに働き(30~49歳の
女性の労働力率が85%)、そして
高齢者が現在より5年長く働いたと
すれば、2030年の労働力人口は
6285万人を維持できる。
さらに続けて、こう書いています。
(P.041)
ハードルが高い施策を3つとも成功
させなければ、働く人の減少速度を
緩められない。それほど日本の
労働環境は切迫している。人口減少
国家の宿命から逃れることは極めて
難しいのだ。
日経ビジネスは、次のように締めくくっています。
(P.041)
残された期間は少ない。貴重な
「人財」を活かす経営に、本気で
舵を切らなければ、企業の方が
「使い捨て」にされるだけだ。
あなたはもう安泰ですね。
売り手市場で生き残っていくことが
できるでしょう。
勝ち残っていけるかどうかは、あなたの
努力と根性と運次第かもしれませんが・・・
(参考 再掲)
ユニクロがパート・アルバイト1万6000人を
正社員化するという発表を、今年3月に行いました。
詳しくは、ユニクロ大転換 柳井正の決断 2014.03.24 <1>
をご覧ください。
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