安倍晋三 「強い首相」は本物か 2013.7.29
ノートに記した「戒め」
安倍晋三首相が時々眺める自筆のノートが
あるそうです。
第1次安倍内閣は2006年9月に高支持率を
得てスタートしましたが、
体調を崩し、あえなく1年間で終わりました。
なぜ1年で終わったのか。どの判断が
間違っていたのか。
そんな胸の内を2007年暮れから書き綴って
きたものだそうです。
「ノートには『情に流されてはいけない』という
趣旨の戒めの言葉が記されているという」。
短命で終わった第1次安倍内閣の要因は
何だったのか?
日経ビジネスは次のように指摘しています。
「必要な情報が官邸に上がりにくくなり、
首相~閣僚~各省庁とつながる縦の指揮
命令系統が機能不全に陥ったことも政権の
早期崩壊の要因だった」。
官僚組織は、根源的な問題が長年指摘されてきながら、
一向に改善されていません。
縦割りのため各省庁との連携がうまく取れません。
昔、東京大学名誉教授・中根千枝さんは、
日本はタテ社会に特徴があると、
タテ社会の人間関係 (講談社現代新書 105)
の中で、語っていました。
この本が出版されたのは、1967年2月16日のことです。
約半世紀前です。
半世紀経っても、縦割り行政は
全く変わっていません。
「協働」や「共創」は、所属する組織内でしか
できません。
優れた民間企業であれば、横断組織
(クロスファンクショナルチーム)に
よって全体最適を追求しています。
官僚組織にはそれができません。
既得権益を死守することだけに血道を上げ、
自分が所属する省庁のことだけを考えて、
働いています。
それが国民の利益に反することであってもです。
話が横道にそれたので戻します。
「その(指揮命令系統が不全に陥った)反省を
踏まえ、今回の人事で重視したのは『情より実務』。
象徴が官邸の人事だ。前回は要の官房長官に
『お友達』の1人で経済政策を頼る塩崎恭久氏を
起用したが、今回は迷うことなく菅義偉(すが・
よしひで)氏を充てた。第1次内閣の崩壊後も
安倍首相の復活を後押ししてきた菅氏。
(中略)
永田町や霞ヶ関に張り巡らしたネットワークに
基づく統率力や判断力を買ってのことだ」。
菅氏を「司令塔」にしたことでどのような効果が
あったのでしょうか?
1つは、
「官邸を菅氏を軸に回す意図を明確にしたことで
菅氏が司令塔として政権運営全般に目配りする
体制が機能している」
ことです。
もう1つは、
「菅氏を司令塔に情報収集と迅速な判断を下す
体制を整備したことは、危機管理の面でもプラス
に作用している。前回の内閣では相次ぐ閣僚の
スキャンダルへの対応が後手に回り、それが
内閣支持率急落の引き金となった。
その苦い経験から、今回は菅氏が汚れ役を
買って出て、早期の幕引きを図る場面が
続いている」
ことです。
挫折の教訓を生かしているポイントとして、
日経ビジネスはこのように指摘しています。
「政策の優先順位を冷静に判断している点だ。
第1次内閣では『戦後レジームからの脱却』を
旗頭に憲法改正の手続きを定めた国民投票法
の制定や教育基本法の改正など保守色の濃い
政策を実現した。
(中略)
『自分がやりたいことと国民がまず実行して
ほしいこととがかみ合っていなかった』」。
どう変わったのかを一言でいえば、
「理念先からリアリストへ」
ということになります。
先の参議院選挙で大勝した自民党ですが、
建設業界や農協、医師会などの組織をバック
にして当選した議員が多数います。
TPP(環太平洋経済連携協定)への参加を
決定した安倍内閣にとって、このような
団体の利害に直結する政策は推進しづらく、
族議員の反対に遭遇することは避けられない
でしょう。
次回は、「敵は『自民党』にあり」と題して
お伝えします。
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