『ナース裏物語』
『ナース裏物語 白衣の天使たちのホンネ』(中野有紀子
文春文庫)という本を興味深く読みました。
以前、書きましたが、私は入院したことは、記憶では1度
だけで、しかもわずか1日しかありません。
病院にはめったに行きません。
知り合いの病気見舞いに行ったことは、何度かあります。
その程度ですから、看護師さんと接したことはありません。
ですから、医療ドラマや小説の中で、看護師さんの仕事の
一部を知るだけの知識しかありませんでした。
この本の著者、中野有紀子さんは現役の看護師さんです。
看護師歴は10数年の中堅看護師さんです。
中野さんはこの本を書くに当り、同僚や先輩、看護学校の
同期から聞いた話や、自分が経験したことを取りまとめて
います。
この本には看護師さんのホンネが書かれています。
看護師、医師、病院の実態を女性らしい表現で述べています。
好奇心を持って読んでいきましたが、期待(?)は裏切られ
ました。
「白衣の天使」というイメージが先行しがちですが、看護師
さんは女らしくしていては、続かないそうです。
患者さんを抱き起こしたりしなければならないので、腕も
逞しくなってしまうそうです。
尚、内容が豊富なので3回に分けて、お伝えしていきます。
前置きが長くなりましたので、具体例をお話していきましょう。
これからは本書の表記通り、看護師ではなくナースで統一します。
[ナース服、アクセサリー]
どの病院でも年に2~3枚ほどが支給されるそうですが、
「ダサい」ため自分で買ったものを着ていることが多いそうです。
セシールやアスクルで入手できるそうです。
ドラマではミニスカートが主流ですが、「あんなスカート丈じゃ
とてもじゃないけど働けません」と書いています。
ピアス、ネックレスの2つはOKな病院は多いということです。
派手なアクセサリーをつけている看護師が稀にいるそうですが、
そういう看護師は「仕事ができる」から許されているということ
です。
「要は、仕事ができれば誰も文句は言わない、ということ」
なんですね。
この点は、一般企業でも同じことが言えるかもしれません。
[外来勤務]
総合病院の場合、外来勤務に回される人に特徴があるというのです。
「使えない人」と「妊婦」だそうです。
こうしたことは外部からは分かりませんね。時々、お腹の大きい
看護師がいます。この人たちを指しています。
[3年目]
3年目から新人ではなくなるということです。
3年経つと一人前と見なされるのですね。
新人でなくなるだけではなくて、プリセプター(指導係)となり、
新人ナースを指導したくてはなりません。
なぜ3年目のナースがプリセプターになるかといえば、新人ナースと
年齢が近く話しやすいということがあるようです。
[天敵]
ナースにとって天敵は誰だと思いますか?
言われてみるとなるほど、と納得できるところがあります。
ナースにとって天敵と言える存在は「女医」です。
一瞬「?」と思った後、話を聞くと、なるほどな、と実感します。
その理由として、中野さんはこう語っています。
「『女であるコンプレックスをナースに八つ当たり』
するようなタイプが多かった気がします」
女医の特徴として4つあげています。
誤解のないように先にお話しておきますが、女医のすべてがそうだ
ということではありません。また、中野さんや同僚などが感じた
ことです。
1 理不尽なことを言ったり、感情的になる人が多い
2 男性医師に対するコンプレックスがむき出し
3 ナースをあからさまにバカにする
4 格好が派手な割に仕事を真面目にしない
「他の病院の友人たちと愚痴大会をしていても、女医の登場率は
相変わらず高いです」
[ジェネリック医薬品]
最近、ジェネリック医薬品のテレビCMが流されることが多くなり
ましたね。
特許が切れた医薬品で、比較的新しい薬品と効能が変わらないのに
安いという特長があります。
この点を病院側から見ると別の側面が明らかになります。
「『点滴など病院での消費が多い薬で、安いジェネリック医薬品が
導入される=病院の経営が危ない』ということなんです」
[エンゼルケア]
エンゼルケアというナースにとって大切な仕事があります。
ある意味では、これが究極の白衣の天使(エンゼル)と言えるかも
しれません。
入院していた患者さんが、亡くなってから行なうことなのです。
「エンゼルケアというのは、亡くなった方に施す最後の処置のこと。
死後硬直は、死亡の約2時間後から徐々に始まります。その前に
処置をしておかないといけないので、ここは大急ぎ。
まず、身体をきれいに拭きます。そして次に使うのは、割り箸と脱脂綿」
人間の身体には様々な穴が開いていて、生きている間は意志で閉じる
ことができるが、死ぬとできなくなります。
そうすると分泌物や内容物が出てきてしまうので、脱脂綿を詰めて
出ないようにするということです。
臭いだけではなく、病原菌が飛散してしまう可能性があるからです。
あと2点お話します。
1つは、まぶたが確実に閉じるようにするために特殊なものを使う
そうです。
「まぶたが確実に閉じるよう、『閉眼紙』という紙を水に濡らして
眼に入れます。コンタクトレンズを入れるのと同じ要領ですね」
もう1つは、最後に行なうことです。
「最後に、寝間着を着せてあげて、身体の形を整えて完了。終わったら、
遺体を慰安室に運びます」
今から16年前(平成10年)、父が病院で病死しました。
当時、私は家庭を持ち実家を離れていたため、早朝に亡くなった父の
死に目に会えませんでした。
ですから、病院内でこのような「作業」がナースによってされている
とは知りませんでした。
これらの記述を読んだ時、複雑な気持ちになりました。
記事が面白かったら
ポチッとして下さい。

ナース裏物語―白衣の天使たちのホンネ (文春文庫)