バックナンバー(44)
ここに掲載しているのは、管理人・藤巻隆が
携帯サイトで運営していた時のコンテンツです。
2007年1月8日号からスタートしています。
1カ月分毎にまとめてあります。
● 2010.8.30
(No.4)<185>
食べないものは売るな
玉村 豊男(たまむら・とよお)氏
[エッセイスト、画家、ワイナリー代表]
県内で食べないものを県外に売ろうとするのは、そろそろやめた方がいい、というのが私の持論である。
宮崎県民が誰も食べない1個数千円のマンゴーを県外に売り込むことで知事が名を上げるような時代は、過ぎ去ったのではないのか。
B級グルメが流行っているのはなぜだろう。
それは、宇都宮には餃子の店がいっぱいあって地元の人たちが餃子を食べているし、富士宮には焼きそばの店がいっぱいあって地元の人たちが焼きそばを食べているからだ。
地元の人たちが好んで食べているものだからこそ、おいしいですよ、といって差し出した時に説得力がある。
もし、世界中で流行っているスシに憧れて日本にやってきた観光客が、日本のどこを探してもスシ屋がなく、日本人がスシを食べていなかった・・・と知ったらどう思うだろうか。
自分たちが食べていないものを、他人に売ろうとしてはいけない。
これは食べもの商売の鉄則だが、外商よりもまず地消を、外需を頼る前にまず内需の拡大を、と考えるのは、ほかのあらゆる分野にも適用できる発想ではないだろうか。
● 2010.8.23
(No.3)<184>
新しい価値観を創る喜び
須藤 シンジ(すどう・しんじ)氏
[フジヤマストア、ネクスタイド・エヴォリューション代表]
例えば、丸井やスポーツメーカーとともに開発したスニーカー。障害者用の靴と言えば、甲の部分が面ファスナーになったベルクロ式が一般的です。
着脱はしやすいものの、デザイン的にはいま一つのものが多いんですね。
それを、シューレース(靴紐)を残したまま、両側にファスナーをつけることで、踵の部分が大きく開いて簡単に着脱できる、デザイン性の高いスニーカーに改良しました。
また、障碍者向けの靴は限られた店や売り場でしか購入できませんが、このスニーカーはファッション感度の高い若者が集まるショップで販売しています。
顧客はこのスニーカーを「履きたい」という視点で選び、商品のタグを見て初めて、ハンディのある人にも履きやすいことに気づくのです。
ハンディのある人にとっても、一般に売られれば買いやすくなる。
格好良いスニーカーを履いて街へ出る、人に会うといった行動は、心身の健康にもいい影響を及ぼすはずです。
私がこのプロジェクトを始めたのは、次男が重度の脳性麻痺で生まれたことが契機でした。
息子に障害があり、一生歩けないだろうと医師から告げられた時は、不幸のどん底に落とされた気がしました。
しかし、それは間違いでした。
ハンディがある次男を育てる過程で、それまで当たり前だと思っていたことが当たり前ではなく、小さなことにも大きな喜びや幸せを見いだせることに気づいたのです。
ハンディは障害ではなく、可能性なのです。
(中略)
現在は、毎月1週間は家族の暮らすニュージーランドでゆっくり過ごすライフスタイルを送っています。
「絶対に歩けるようになる」という私の信念が通じたのか、次男は今ではあのシューレースのスニーカーを履いて、元気に歩いています。
安定収入があり、身体的ハンディもない。
多くの人はそんな状態が幸せだと考えるかもしれません。
けれど、本当の健康や幸せはもっと精神的なものに負うところが大きい気がします。
● 2010.8.9・16
(No.2)<183>
デフレ放置が日本を滅ぼす
山田 久(やまだ・ひさし)氏
[日本総合研究所・ビジネス戦略研究センター所長]
日本では労働組合が、簡単に賃下げを受け入れる傾向が問題です。
景気が良くなったら、賃金が上がる流れができないと、拡大均衡は期待できません。
給料が増えると家計がお金を持つようになり、内需は自然に盛り上がります。
労使、それに政府が協調して賃上げに向けて動かないと日本は縮み志向から抜け出せません。
もちろん国内に製造業が立地しやすいような支援策も必要です。
法人税や関税を引き下げて、国内で企業が雇用しやすい環境を作るべきだと思います。
賃上げは、生産性の低い分野では国内で事業ができなくなることを意味します。
より付加価値の高い産業構造への転換を迫られる。
労働者の技能を高めるための教育への支援も必要です。
長期的な視野で10年くらいの具体的なロードマップを作って、日本は拡大均衡を目指すべきです。
早く手を打たなければ、日本はマイナスの連鎖に沈んでしまいます。
● 2010.8.2
(No.1)<182>
組織変革でオペラ復活
ピーター・ゲルブ(Peter Gelb)氏
[米メトロポリタン歌劇場総裁]
レコード店は町から姿を消し、音楽家たちは昔ほどレコード会社との関係に気を配る必要がなくなりました。
しかしオペラは違います。
自分で録画したり、録音したりできるオペラ歌手はいません。
1つの公演に多くの人手と専門的な作業が必要であり、オペラ制作を専門とする会社が必要です。
今回の改革で、MET(米ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場)総裁の役割も変化しました。
すべてのデジタルコンテンツを自分たちで制作しますから、まさに「プロデューサー」の役割を果たすことになります。
すべての電子コンテンツを、ロボットカメラも含めた最先端の機材を場内に設置して撮影し制作しています。
最新技術、現代の才能と古典オペラの融合により、聴衆の裾野は明らかに広がりました。
顧客層の大幅拡大という、新しいビジネスとして興味深い成果を収めたのです。
とはいえ、今回の改革でMETが自律的に持続可能な組織になったとは、まだ断定できません。
METの約3億ドル(約262億円)の予算のうち、寄付が約1億4000万ドル(約122億円)です。
しかしコストは組合との団体交渉のたび上昇しています。
これまで、コスト上昇率より高い増益率を達成していますが、ライブビューイングを増やせば、その分のコストが増えます。
篤志家のオペラファンに対する資金集め活動は今後も重要です。
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