読み終わりました。2013.08.18
伊集院静氏が若かりし頃、まだ作家として駆け出しの時、
作家・色川武大氏、別名ギャンブルの神様・阿佐田哲夫氏との
ギャンブル(競輪や麻雀)を通じての交流を深め、人生の深みを
学んだ様が活写されています。
フィクションともノンフィクションともとれ、その境界線が
定かではない不思議な小説です。
ただひとつ言えることは、伊集院静氏の闇を理解してくれた人は
色川武大またの名を阿佐田哲夫氏であったということです。
本書の中で、「ナルコレプシー」という病名が出てきます。
初耳でした。
―――ナルコレプシー・・・・・・、そんな病気があるんだ・・・・‥。
「原因不明の病気らしいだけどな。脳幹の機能がおかしくなってるって
言うんだが、治療法もないらしい・・・・‥」(P.32)
色川氏が罹患していたのですが、伊集院氏は突然寝てしまう色川氏を
温かい目で見つめていました。
伊集院氏も悩みを抱えていました。
突然、馬車が襲ってくるという強迫観念に苦しめられてきたのです。
「最初は砂漠というか、磯ばかりの荒野みたいなところに
ぽつんと豆粒みたいにしか見えない遠くにいるんです。
その豆粒が馬車なのかどうかもわからないくらい離れています」
(中略)
「その馬車というか、馬車の群れに取り囲まれてしまうと、
もうどうしようもなくその場にうつぶせて観念するしか
ないんです」
(中略)
「自分一人がその場にかしこまっていて、周囲の人が
びっくりするくらいの速度で食事をしたり、談笑したり、
布団を敷いて寝て、あっと言う間に朝になって起き出し、
食事をして家を出て、すぐに家に戻ってきて・・・・‥」
(P.339-340)
こうした話を伊集院氏が話すと、色川氏は真剣に自分のことのように
耳を傾けます。
色川氏も同様な幻覚を体験してきたからなのです。
二人の波長が合っているのでしょう。
410ページの本ですが、読んでいるうちに引きこまれて
一気に読んでしまいました。
色々と人生を考える時間を与えてくれた本でした。
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