豪雪地:山が吠える | 長谷川隆のブログ 

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 その地はとにかく、雪が多かったです。

 隙間だらけの家は、雪の降り始めが最も寒く、雪が積もる頃になると家のあらゆる隙間が塞がれるので、家の中はそれまでよりもかなり暖かくなる訳です。同時に外の音がなにも聞こえなくなるのです。

 そんな夜外へ出ると、満天の星空の下、どこかで雪を始末する乾いたスコップの音や子供達の声が意外と近くに聞こえたりするのですが、それ以外は、冬の夜は実に静かな世界になるのでした。

 

 NHKの子供向けのラジオ放送で、チベットの拉薩(ラサ)を目指す冒険物語に聞き入ったのは、そんな夜だったかもしれません。

 

<山が吠える> 

 ところが地吹雪(じふぶき)の夜は一変するのです。

 家の周りの吹雪く風音よりも、強風が峰々の大木の林を走り抜ける音が地響きのように聞こえてくるのでした。

 ウォーーー、ウォーーー、ゴーーー、ゴーーー・・・ 

 

 こたつを抱えるように敷いた布団は十分に暖かでしたが、この山が吠える音は実に恐ろしいものでした。

 巨大な鬼が、峰から頭を出して、あたりを見回しながら吠えているようで、どうしても布団に潜りたくなるのでした。

 しかし、炭火のこたつは毒ガスが出るから頭を入れるな、ときつく母に言われていたものです。

 そんな夜はなかなか寝付けなかったものでした。

 ウォーーー、ウォーーー、ゴーーー、ゴーーー・・・ 

 

<冬の橋は危険>

 実は大雪の日、橋は非常に危険な場所になるのです。

 一晩で70センチも積もることはよくあることで、橋の上にも当然積もって、路面がだんだん高くなります。

 雪が積もって路面が欄干を超えてしまったら、歩くところが峰のようになって人が川に滑り落ちやすくなるので、橋の上は常に、最低でも欄干がしっかり出ている状態にしておかなくてはならない訳です。

 

 村の幹線道路では、階段を数段降りて橋を渡ることになるのでしたが、大雪の年は子供には大きすぎる階段が5段にもなったものでした。

 

 竹村商店の入り口には小川が流れていますが、小さな橋だから欄干がありません。だから少しの雪があってもとても危険になるわけです。もう小川はトンネルになっているのですから。

 

 このように、橋が危険だという感覚は、体験しないと理解できないかもしれませんね。

 

<社交場>

 高台の学校への上り口に、消防ポンプの小屋があり、屋根が南向きのピカピカしたトタン屋根でした。

 なぜか「雪止め」もなく、積もった雪は滑り落ちて積み重なるので、そこから簡単に屋根に上がることができたのです。

 晴れた日には、子供たちが集まって日向ぼっこする、格好の社交場となるのでした。