麻布の高級焼肉店で俺の座ったテーブルに並んだ肉はとにかく凄い量だった。







全てが“上”の付く肉。





戸澤はその肉を信じられないスピードで胃に押し込む。





「豪快だなぁ‥」





思わずそう呟くほどだ。







「ところで高瀬君はなんで不良を嫌うんだ?」

戸澤が俺にきいた。





「いや‥嫌いとかじゃなくてですね‥
エバってるのが嫌なんですよ。リスペクトがないっていうか‥」







「リスペクト? ガッハッハッハ!! どういう意味だ?」






「いや‥ 俺達格闘家は命をかけてるヤツもいるんですよ。 ヤクザだってそうかもしれませんが しっぽ巻いて逃げたり 後輩にケツふったりするヤツも沢山いるじゃないすか? なのになんでそんなにエバってんのかな‥って思います。はい‥」
俺は 言っちまった‥と少し後悔した。




戸澤は急に真顔になって俺に言った。


「確かにそういうヤツらもいる。 だけどな、俺達みたいな人種にも こんな時代に義理や人情なんかを大事にするヤツらもいるんだぞ。 それにな‥ 今はインテリヤクザが増えて 人を貶めようとするヤツらが多い中、義理、人情、忠義をかざして武闘派を全うする“本物”もいる。 そいつらは明日を見てない。 今日死んでもいいと考えて生きてる人間だ。 高瀬君にもわかるだろう世界観を持ってるんだ。 そいつらは半端じゃねえ。 命を掛けてるぞ? たった一つしかない命をな。」




俺は返す言葉がなかったが不満だった。




「まあいい 堅い話は止めよう。 せがれが来るまでに説明させてくれ。」

戸澤が本題に入った。




俺は何か納得がいかなかったが話を聞く事にした。


「まず… 娘はな… まだ高校生なんだ。しかもお嬢様学校のな。
悪い男に捕まったんだよ。 」




「悪い男?」



戸澤が眉をひそめて
言った。

「簡単に言えば騙されてるんだ…と思う。ソイツに唆されて 金を持ち出したんだ。
バレてるのに“誘拐”だなんてワケのわからない事言ってな。」





「うーん イマイチ理解できないですね… とりあえず自分はまず何をすればいいんですか?」




すると戸澤は
「沖縄に行ってほしい。」
と言った。





「えっ沖縄!?」










続く。